骨盤臓器脱による尿路閉塞を契機として膿瘍形成を伴うurinomaを発症した1例

urinoma(尿嚢腫)は外傷や尿路閉塞などで尿路外に流出した尿が被包化されて形成した嚢胞であるが, 嚢胞内に膿瘍形成を伴うことがある. urinomaでは, 原因および尿の流出部位を, 画像検査を用いて同定し, 膿瘍合併時には原因の解除に加えてドレナージや抗菌薬加療が行われる. urinomaの発症時にはできるだけ早期に適切な対応を行うことが重要であるが, 産婦人科領域での発症は稀であるため, 対応が遅れる可能性がある. 本症例では, 骨盤臓器脱を契機として発症したurinomaが膿瘍形成に至り, 教訓的な経験をしたので報告する. 症例は76歳女性, 5年前より骨盤臓器脱に対してリングペッサ...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2022-06, Vol.71 (2), p.347-351
Hauptverfasser: 菰下智貴, 田中教文, 八幡美穂, 野村奈南, 佐藤優季, 浦山彩子, 定金貴子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:urinoma(尿嚢腫)は外傷や尿路閉塞などで尿路外に流出した尿が被包化されて形成した嚢胞であるが, 嚢胞内に膿瘍形成を伴うことがある. urinomaでは, 原因および尿の流出部位を, 画像検査を用いて同定し, 膿瘍合併時には原因の解除に加えてドレナージや抗菌薬加療が行われる. urinomaの発症時にはできるだけ早期に適切な対応を行うことが重要であるが, 産婦人科領域での発症は稀であるため, 対応が遅れる可能性がある. 本症例では, 骨盤臓器脱を契機として発症したurinomaが膿瘍形成に至り, 教訓的な経験をしたので報告する. 症例は76歳女性, 5年前より骨盤臓器脱に対してリングペッサリーで保存加療中であったが, リングペッサリーの滑脱を繰り返し, 排尿障害が持続していたため, 当科紹介となった. 手術待機中に下腹部痛と乏尿のため救急受診した際に, 完全子宮脱に加えて, 発熱, 炎症反応の上昇があり, 追加で行った造影CT検査で, 左腎盂拡張を認めたため, 腎盂腎炎と診断して抗菌薬加療を開始した. 治療開始後, 熱型, CRPは改善傾向であったが, 発熱とCRPの再上昇を認めた. そのため再度造影CT検査を行ったところ, 膿瘍形成を伴うurinomaを認め, CTガイド下ドレナージと尿管ステント留置を行い, 症状は改善した. その後, 骨盤臓器脱に対して腟閉鎖術(Le Fort術)を行い, urinomaは再発なく経過している. 入院時の造影CT検査を後方視的に確認したところ, すでにurinomaが形成されていた. この時点で, urinomaと診断し, 適切な対応を行えば, 膿瘍形成まで至らなかった可能性がある. urinomaは早期診断と適切な治療が重要で, urinomaが膿瘍を形成した際には, 積極的な観血的処置を検討する必要がある.
ISSN:1882-482X