腹腔鏡下手術施行後に判明した卵巣甲状腺腫性カルチノイドの一症例
神経内分泌細胞から発生する腫瘍のうち, 高分化のものをカルチノイドと呼び, 進行が遅く予後良好とされる. カルチノイドは消化管に好発するが, 卵巣にも0.5~1.7%の頻度で発生することが知られている. 今回, 良性卵巣腫瘍の術前診断で腹腔鏡下手術を施行し, 術後病理診断にて卵巣成熟奇形種の一部に甲状腺腫性カルチノイドを認めた一例を経験したので報告する. 症例は48歳, 未妊婦. 甲状腺機能亢進症の既往があったが, 寛解していた. がん検診目的にて近医産婦人科を受診した際に卵巣腫瘍を指摘され, 精査加療目的にて紹介となった. CT, MRIでは左卵巣甲状腺腫が疑われ, 同時に右卵巣に皮様嚢腫も...
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Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2022-06, Vol.71 (2), p.205-210 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 神経内分泌細胞から発生する腫瘍のうち, 高分化のものをカルチノイドと呼び, 進行が遅く予後良好とされる. カルチノイドは消化管に好発するが, 卵巣にも0.5~1.7%の頻度で発生することが知られている. 今回, 良性卵巣腫瘍の術前診断で腹腔鏡下手術を施行し, 術後病理診断にて卵巣成熟奇形種の一部に甲状腺腫性カルチノイドを認めた一例を経験したので報告する. 症例は48歳, 未妊婦. 甲状腺機能亢進症の既往があったが, 寛解していた. がん検診目的にて近医産婦人科を受診した際に卵巣腫瘍を指摘され, 精査加療目的にて紹介となった. CT, MRIでは左卵巣甲状腺腫が疑われ, 同時に右卵巣に皮様嚢腫も指摘された. 腫瘍マーカー(CA125, CA19-9, SCC)は全て正常範囲内であった. 両側卵巣腫瘍の診断にて腹腔鏡下手術(左付属器摘出術, 右卵巣嚢腫摘出術, 右卵管切除術)の方針とした. ポートはダイヤモンド法で配置し, 摘出した左付属器及び右卵巣嚢腫は回収バッグに収納して回収した. 右卵巣皮様嚢腫摘出時に被膜破綻を認めたが, 左付属器は腫瘍を一塊として摘出したため, 腫瘍の腹腔内露出は認めなかった. 術後病理診断にて右卵巣は成熟奇形腫であったが, 左卵巣腫瘍は成熟奇形腫の一部に甲状腺組織を認め, 免疫染色を行ったところ, synaptophysin, chromogranin A, CD56陽性でKi-67指数が2 - 3%, 核分裂像は0-1/10HPFの所見だったためWHO分類でNET: 1相当の甲状腺腫性カルチノイドと診断された. 術後に全身検索目的にてPET-CTを追加したが, 明らかな転移を示唆する所見は認めなかったため, 経過観察とした. 現在まで明らかな再発徴候は認めていない. 卵巣甲状腺腫性カルチノイドは境界悪性腫瘍に分類されるものの, 予後は良好で局所切除で予後良好だった報告も複数認めている. 卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下手術では, 常に境界悪性以上のリスクを考慮して飛散なく摘出・回収する配慮が必要であることを再認識した. |
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ISSN: | 1882-482X |