腹腔鏡下に予防的性腺摘出術を施行した完全型アンドロゲン不応症の一例

「緒言」アンドロゲン不応症(androgen insensitivity syndrome, AIS)はX染色体長腕上のAR遺伝子変異による46,XY性分化疾患である. アンドロゲン作用の障害の程度により表現型は完全女性型から様々な程度の男性型を呈する. また将来的な性腺の悪性化も知られている. 完全型アンドロゲン不応症(complete AIS, CAIS)と診断し, 予防的性腺摘出術を施行した1例につき報告する. 「症例」17歳, 0妊. 初経遅延を主訴に前医を受診し, 精査目的に紹介となった. 身長162cm, 体重59.7kg. MRI検査で子宮は欠損し, 腟は盲端に終わり, 骨盤内に...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2022-12, Vol.71 (1), p.57-61
Hauptverfasser: 篠崎真里奈, 久保光太郎, 楠元理恵, 樫野千明, 光井崇, 長谷川徹, 鎌田泰彦, 増山寿
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「緒言」アンドロゲン不応症(androgen insensitivity syndrome, AIS)はX染色体長腕上のAR遺伝子変異による46,XY性分化疾患である. アンドロゲン作用の障害の程度により表現型は完全女性型から様々な程度の男性型を呈する. また将来的な性腺の悪性化も知られている. 完全型アンドロゲン不応症(complete AIS, CAIS)と診断し, 予防的性腺摘出術を施行した1例につき報告する. 「症例」17歳, 0妊. 初経遅延を主訴に前医を受診し, 精査目的に紹介となった. 身長162cm, 体重59.7kg. MRI検査で子宮は欠損し, 腟は盲端に終わり, 骨盤内に両側性腺を認めた. 乳房Tanner IV度, 恥毛Tanner I度で腋毛を欠き男性型発毛は認めなかった. 外性器は女性型で腟が存在した. 血液検査にてエストラジオール23.3 pg/mLであったが, テストステロン5.67 ng/mLと異常高値であった. 染色体検査は46,XYであったが, 性自認は女性であった. CAISと診断し, 高校卒業時に予防的性腺摘出術を腹腔鏡下に施行した. 性腺は卵巣様であったが円靭帯に連続して内鼠径輪へと向かうように存在し, 正常女性のみならず, Mayer-Rokitansky-Kuster-Hauser(MRKH)症候群の骨盤解剖とも異なっていた. 病理組織診断は, 性腺は精巣であり卵管様構造も認めた. 術後経過は良好で, 現在エストロゲン補充療法を施行中である. 「考察」AISでは将来的な性腺の悪性化が知られており, 予防的性腺摘出術の検討が必要となる. しかし, 患者, 家族の精神的負担も大きく, 診断の告知や予防的性腺摘出術の時期など, 慎重に個別対応する必要がある. また, 男性生殖器の解剖及び発生学の知識を要し, 性腺摘出術の際には, 通常の付属器切除術とは骨盤解剖を異にすることに留意すべきである.
ISSN:1882-482X