妊娠末期に発症し自然治癒した急性ヘルペス肝炎の1例
HSV(herpes simplex virus, 単純ヘルペスウイルス)感染症による急性肝炎の劇症化は稀であるが, 妊娠はHSV肝炎の劇症化のリスク因子のひとつとして知られている. 今回我々は, 妊娠中にHSV肝炎を発症し自然治癒した症例を経験したので報告する. 症例は20歳の初産婦, 妊娠32週0日に約5日前より持続する心窩部痛と食思不振を主訴に当院救急外来を受診. 採血にてCRPの軽度上昇とトランスアミナーゼ上昇を認めたが, 発熱やその他の項目に異常なく全身状態良好であった. HSV-IgM陽性よりHSV肝炎と診断した. 診断時すでに初発症状出現から2週間以上が経過, トランスアミナーゼ...
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Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2021-12, Vol.70 (1), p.19-23 |
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Hauptverfasser: | , , , , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | HSV(herpes simplex virus, 単純ヘルペスウイルス)感染症による急性肝炎の劇症化は稀であるが, 妊娠はHSV肝炎の劇症化のリスク因子のひとつとして知られている. 今回我々は, 妊娠中にHSV肝炎を発症し自然治癒した症例を経験したので報告する. 症例は20歳の初産婦, 妊娠32週0日に約5日前より持続する心窩部痛と食思不振を主訴に当院救急外来を受診. 採血にてCRPの軽度上昇とトランスアミナーゼ上昇を認めたが, 発熱やその他の項目に異常なく全身状態良好であった. HSV-IgM陽性よりHSV肝炎と診断した. 診断時すでに初発症状出現から2週間以上が経過, トランスアミナーゼは低下し全身状態良好のため, 抗ウイルス薬による治療は行わず, 自然治癒した. 我々が文献検索を行った範囲では, 妊娠中の肝障害でHSV肝炎として認識され, 劇症化することなく自然治癒した症例は認められず, 本症例がその第1報である. HSV肝炎は稀な疾患であるがゆえに, その自然史は不明な点が多く, 本症例のように劇症化することなく自然治癒するHSV肝炎は見逃されている可能性がある. 今回我々が経験した症例は既報と異なり劇症化することなく自然治癒したが, HSV自体はありふれたウイルスであること, HSV肝炎は劇症化した場合死亡率が高いことから, 妊娠末期の肝障害の鑑別診断の1つとしてHSV肝炎を考慮することが重要であると考えられた. |
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ISSN: | 1882-482X |