腹腔鏡下に部分切除した後腹膜神経鞘腫の1例
神経鞘腫は頭頸部や四肢に好発する腫瘍であり, 後腹膜領域に発生することはまれである. 今回, 神経鞘腫が疑われる後腹膜腫瘍に対し腹腔鏡下に手術を行い, 部分切除することによって重度神経障害を回避しえた. 文献的考察を加え後腹膜神経鞘腫に対する部分切除術の有用性を検討する. 症例は80歳女性. 胃疾患の精査でCTを撮影した際に右卵巣腫瘍が疑われた. 症状はなく, 腫瘍マーカーは陰性であった. MRIではT1強調像で低信号, T2強調像で高信号を呈する直径6.4cm大の多房性嚢胞性腫瘍を子宮の右側に認めた. 造影CTでは後腹膜腔に発育する腫瘍であることが判明した. 画像所見より後腹膜に発生した神経...
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Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2018-06, Vol.67 (2), p.313-317 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 神経鞘腫は頭頸部や四肢に好発する腫瘍であり, 後腹膜領域に発生することはまれである. 今回, 神経鞘腫が疑われる後腹膜腫瘍に対し腹腔鏡下に手術を行い, 部分切除することによって重度神経障害を回避しえた. 文献的考察を加え後腹膜神経鞘腫に対する部分切除術の有用性を検討する. 症例は80歳女性. 胃疾患の精査でCTを撮影した際に右卵巣腫瘍が疑われた. 症状はなく, 腫瘍マーカーは陰性であった. MRIではT1強調像で低信号, T2強調像で高信号を呈する直径6.4cm大の多房性嚢胞性腫瘍を子宮の右側に認めた. 造影CTでは後腹膜腔に発育する腫瘍であることが判明した. 画像所見より後腹膜に発生した神経鞘腫を疑い, 腹腔鏡下手術の方針となった. 手術所見で子宮と両側付属器は正常であったが, 子宮右側の後腹膜腔に発育する腫瘤を認めた. 腫瘤は表面平滑な嚢胞性腫瘍で, 剥離の途中で被膜破綻したが, 内容は淡黄色透明の漿液で充実成分を認めなかった. 腫瘍の剥離を可及的に進めたところで腰仙骨神経幹と腫瘍との連続性を認め, 神経性腫瘍であると疑った. 腫瘍の全摘出による重大な神経損傷を回避するため, 一部嚢胞壁を残し部分切除を行った. 組織学的所見は良性神経鞘腫であった. 術後に右下肢の痺れ, 疼痛と軽度筋力低下による歩行障害を認めたが, 外来でリハビリテーションを継続することとし, 術後6日目に退院した. 右下肢の症状は理学療法とプレガバリン内服により術後1か月目には改善した. 神経鞘腫に対する治療に関し, 腫瘍全摘術は部分切除術や腫瘍核出術と比較し術後の神経障害の発生が増加するという報告がある. 神経鞘腫はほとんどが良性であることを考えると, 周囲臓器を損傷させずに全摘出を行うことが困難な場合は部分切除術を行うことも妥当であると考えられる. 後腹膜神経鞘腫はまれな疾患であるため, 治療法につき患者から十分なインフォームドコンセントを得た上で個々の症例に応じ手術方法の決定を行うことが重要である. |
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ISSN: | 1882-482X |