子宮体癌術後に発生した難治性リンパ漏に対し, リンパ管造影が奏功した1例
婦人科悪性腫瘍手術では基本術式に後腹膜リンパ節郭清が含まれる. リンパ節郭清後の術後合併症として, リンパ嚢胞やリンパ浮腫が生じることがある. いずれもリンパ液の漏出が原因だが, 多くの場合では症状は一時的であり, 対症療法で経過観察が可能である. 今回我々は, 後腹膜リンパ節郭清後のリンパ漏による難治性腹水を経験し, リンパ管造影が奏功したので報告する. 症例は57歳, 2妊1産. 術前診断で子宮体癌IA期相当と判断し, 準広汎子宮全摘術, 両側付属器切除術, 後腹膜リンパ節郭清, 大網切除を施行し, 術後経過は良好で術後8日目に退院した. しかし, 退院5日後に腹部膨満感を主訴に外来を受診...
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Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2018-12, Vol.67 (1), p.107-110 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 婦人科悪性腫瘍手術では基本術式に後腹膜リンパ節郭清が含まれる. リンパ節郭清後の術後合併症として, リンパ嚢胞やリンパ浮腫が生じることがある. いずれもリンパ液の漏出が原因だが, 多くの場合では症状は一時的であり, 対症療法で経過観察が可能である. 今回我々は, 後腹膜リンパ節郭清後のリンパ漏による難治性腹水を経験し, リンパ管造影が奏功したので報告する. 症例は57歳, 2妊1産. 術前診断で子宮体癌IA期相当と判断し, 準広汎子宮全摘術, 両側付属器切除術, 後腹膜リンパ節郭清, 大網切除を施行し, 術後経過は良好で術後8日目に退院した. しかし, 退院5日後に腹部膨満感を主訴に外来を受診し多量の腹水貯留を認めた. 腹腔穿刺を施行し, 淡黄色漿液性の腹水を2200ml除去した. 腹水細胞診では異型細胞は認めず, 諸検査および臨床経過からリンパ漏による腹水貯留が考えられた. その後も腹水貯留は持続し腹腔穿刺を繰り返していたが, 改善が得られないため, 術後80日目に形成外科と合同で左足関節内側からリンパ管造影を施行した. リピオドールを注入すると, 総腸骨リンパ節付近で腹腔内に造影剤が拡散する像を得た. 造影後より腹水貯留量は徐々に減少し, リンパ管造影後1ヶ月目には腹水は消失し, 再貯留なく経過している. リンパ漏とはリンパ節郭清後にリンパ管損傷部位よりリンパ液が腹腔内に漏れ出ている状態で, 保存的治療で4週間を超えて軽快しない場合は難治性とされる. リピオドールを用いたリンパ管造影により漏出部位を塞栓することでリンパ漏が改善し, 高率に外科的治療を回避できたとの報告がある. 本症例では下肢からのリンパ液の腹腔内漏出が原因であり, リピオドールの塞栓により難治性リンパ漏が改善したと考える. リンパ管造影はリンパ漏の評価だけでなく, 治療効果を期待できる可能性がある. |
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ISSN: | 1882-482X |