産褥期の脳梗塞を契機に診断したもやもや病の一例

もやもや病は両側内頸動脈終末部から前大脳動脈・中大脳動脈近位部の狭窄あるいは閉塞と周囲の異常血管網を特徴とする原因不明の疾患である. 今回, 経腟分娩後の産褥期に脳梗塞を発症し, 診断に至ったもやもや病の一例を経験したので報告する. 症例は32歳, 未経産婦で, 既往歴, および家族歴に特記事項は認めなかった. 妊娠11週から当院で管理し, 妊娠経過は順調であった. 妊娠41週0日に子宮収縮増強のため入院し, その際に遅発型軽症妊娠高血圧症と診断した. 微弱陣痛と血圧上昇のため陣痛促進後, 吸引分娩とし, 3525gの男児をApgar Score 8/9点で娩出した. 産褥3時間に3分間程度の...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2015-11, Vol.64 (1), p.77-80
Hauptverfasser: 周防加奈, 上垣崇, 村上二朗, 下雅意るり, 門脇浩司, 大野原良昌
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:もやもや病は両側内頸動脈終末部から前大脳動脈・中大脳動脈近位部の狭窄あるいは閉塞と周囲の異常血管網を特徴とする原因不明の疾患である. 今回, 経腟分娩後の産褥期に脳梗塞を発症し, 診断に至ったもやもや病の一例を経験したので報告する. 症例は32歳, 未経産婦で, 既往歴, および家族歴に特記事項は認めなかった. 妊娠11週から当院で管理し, 妊娠経過は順調であった. 妊娠41週0日に子宮収縮増強のため入院し, その際に遅発型軽症妊娠高血圧症と診断した. 微弱陣痛と血圧上昇のため陣痛促進後, 吸引分娩とし, 3525gの男児をApgar Score 8/9点で娩出した. 産褥3時間に3分間程度の意識消失発作, 左上下肢不全麻痺が出現した. 頭部CT検査で明らかな脳出血や脳梗塞の所見はなく, 産褥子癇発作と判断し, 硫酸マグネシウムの持続静注を開始した. 産褥3日に再度意識消失発作と左上肢麻痺が出現し, 頭部CTおよびMRIを再検した. CT所見にて左尾状核付近に低吸収域を認めた. またMRIでは, 左側優位の両側尾状核, 右放線冠, 右前頭葉における梗塞巣を確認した. さらに, MRAでは左側優位の両側内頚動脈遠位部の閉塞と, 両側脳底部異常血管網がみられたため, もやもや病に伴う脳梗塞と診断し, 抗血小板療法を開始した. 産褥4日に左上肢不全麻痺に対してリハビリ療法を開始した. その後, 病状は改善傾向となり, 産褥22日に退院した. 産褥8か月の時には麻痺症状はさらに改善した. 周産期に意識障害や神経症状が出現した際には, 脳出血や脳梗塞の可能性と, その原因疾患としてのもやもや病の存在にも留意しておくべきである. また, もやもや病合併妊娠の周産期管理としては妊娠中の厳重な血圧管理と, 血圧変動に留意した分娩様式の選択が重要であると考えた.
ISSN:1882-482X