黄体化過剰反応に重症妊娠高血圧腎症を続発した1例

黄体化過剰反応とは, 妊娠や絨毛性疾患においてhCG刺激に反応して多発性黄体化卵胞嚢胞が形成され, 両側性の卵巣腫大をきたす良性疾患である. また, 妊娠高血圧腎症を発症した症例も報告されているが, その関連性や機序については未だ不明である. 今回, 妊娠中期に黄体化過剰反応による卵巣腫大を認め, 後に重症妊娠高血圧腎症を発症した症例を経験したので報告する. 患者は33歳, 2経妊2経産. 自然妊娠成立後, 妊娠15週1日に超音波検査で7cmの多房性嚢胞性腫瘤を子宮左側に認めた. 妊娠19週2日には, 腫瘤は12cm大に増大し, 翌日に当院を紹介受診した. 超音波検査, MRIでは子宮左側に2...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2014-05, Vol.63 (2), p.331-334
Hauptverfasser: 川崎正憲, 信実孝洋, 小西晴久, 平田英司, 三好博史, 工藤美樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:黄体化過剰反応とは, 妊娠や絨毛性疾患においてhCG刺激に反応して多発性黄体化卵胞嚢胞が形成され, 両側性の卵巣腫大をきたす良性疾患である. また, 妊娠高血圧腎症を発症した症例も報告されているが, その関連性や機序については未だ不明である. 今回, 妊娠中期に黄体化過剰反応による卵巣腫大を認め, 後に重症妊娠高血圧腎症を発症した症例を経験したので報告する. 患者は33歳, 2経妊2経産. 自然妊娠成立後, 妊娠15週1日に超音波検査で7cmの多房性嚢胞性腫瘤を子宮左側に認めた. 妊娠19週2日には, 腫瘤は12cm大に増大し, 翌日に当院を紹介受診した. 超音波検査, MRIでは子宮左側に25cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め, 左卵巣由来の粘液性嚢胞腫瘍が疑われた. 急速増大傾向のため悪性腫瘍の可能性も考慮し, 妊娠20週2日に開腹手術を行った. 両側卵巣はともに15cmに腫大しており, 多房性腫瘤を形成していた. 左付属器切除と右卵巣腫瘍核出術を施行し, 病理組織診断は妊娠性大型孤在性卵胞嚢胞であり, 黄体化過剰反応と診断した. その後外来管理していたが, 妊娠25週0日, 血圧が173/112mmHgと上昇し, 尿蛋白量2.4g/日を認め, 重症妊娠高血圧腎症と診断した. 入院管理していたが, 妊娠27週0日時には尿蛋白量が5.1g/日となり, 妊娠高血圧腎症の増悪と胎児発育停止のため, 帝王切開での分娩となった. 新生児は474gの女児でApgar scoreは1分値3点, 5分値8点で明らかな奇形は認めなかった. 多房性, 両側性の卵巣腫大である黄体化過剰反応は, 通常出産後には自然退縮することから経過観察が望ましく, 不要な手術を避けるため疾患の特徴について熟知しておく必要がある. さらに, 黄体化過剰反応には妊娠高血圧腎症を続発した報告が多々あり, 妊娠高血圧腎症の発症には注意が必要である.
ISSN:1882-482X