脳梗塞合併妊娠の分娩管理の一例
妊婦・褥婦に脳梗塞を合併する頻度は分娩100,000件に21.3例と稀ではなく, 特に産褥期の発症が多い. 妊娠31週に脳梗塞を発症し, 抗凝固療法を継続して妊娠38週に計画分娩とした症例を経験したので報告する. 症例は27歳, 初産. 既往歴はなく, 長兄が15歳で脳梗塞を発症したという家族歴がある. 妊娠31週に右半身麻痺, 構音障害, 失語が出現し, MRI拡散強調画像にて左前頭葉に高信号領域を, MR angiographyにて左中大脳動脈末梢の描出不良を認め, 脳梗塞と診断された. 自己免疫性疾患や抗リン脂質抗体症候群は認めず, プロテインS活性44%と軽度低下を認めた. 急性期はア...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2012-06, Vol.61 (2), p.287-290 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 妊婦・褥婦に脳梗塞を合併する頻度は分娩100,000件に21.3例と稀ではなく, 特に産褥期の発症が多い. 妊娠31週に脳梗塞を発症し, 抗凝固療法を継続して妊娠38週に計画分娩とした症例を経験したので報告する. 症例は27歳, 初産. 既往歴はなく, 長兄が15歳で脳梗塞を発症したという家族歴がある. 妊娠31週に右半身麻痺, 構音障害, 失語が出現し, MRI拡散強調画像にて左前頭葉に高信号領域を, MR angiographyにて左中大脳動脈末梢の描出不良を認め, 脳梗塞と診断された. 自己免疫性疾患や抗リン脂質抗体症候群は認めず, プロテインS活性44%と軽度低下を認めた. 急性期はアルガトロバンによる抗凝固療法を行い神経症状は軽快し, 未分画ヘパリン療法に変更した. 妊娠36週に当院へ転院し, 抗凝固療法を継続しながら妊娠38週に計画分娩を行った. 未分画ヘパリン中止2時間後に硫酸プロタミンを投与し児娩出となった. 出血傾向を認めず, 分娩時出血量は105gであった. 出生児は体重2,808g, Apgar score 1分値8点, 5分値9点で異常は認めなかった. 分娩2時間後から未分画ヘパリン療法を再開し, 産褥1日目からワルファリンの投与を開始し産褥4日目に未分画ヘパリンを中止した. 産褥6日目の頭部MRI検査にて脳梗塞の再発は認めず, 産褥9日目に母児ともに退院した. 産褥6ヶ月では神経症状は残存しているが増悪はなく, ワルファリン5mg/日の内服を継続中である. 脳梗塞合併妊娠は母児の生命に関与し, 麻痺などの後遺症を残す恐れのある重篤な疾患である. 再燃を防ぐため抗凝固療法を継続することが必須であるが, 分娩時の出血傾向というリスクを伴うため注意深い分娩管理が必要である. |
---|---|
ISSN: | 1882-482X |