対照的な臨床経過を辿った原発性腹膜癌の2例

原発性腹膜癌は組織学的特徴や臨床所見, 治療成績が進行卵巣漿液性腺癌と非常に似ているため, 現時点ではそれに準じて取り扱われる. 治療の主軸は, 最大限の腫瘍減量手術とタキサン-プラチナ製剤の併用化学療法の組み合わせである. 卵巣癌と同様, 短期的な治療成績は良好であるが, 長期的な予後は依然不良である. 今回, 対照的な臨床経過を辿った2例の腹膜癌を経験した. 症例1は63歳で, 多量腹水と腹水細胞診で腺癌細胞を認め, 画像上右付属器領域の不整な嚢胞性腫瘍と右横隔膜下腫瘍を認めた. 進行卵巣癌の疑いで試験開腹したが両側卵巣は正常であり, S状結腸間膜に浸潤する嚢胞性腫瘍, 大網播種, および...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2011, Vol.60 (1), p.1-6
Hauptverfasser: 田村貴央, 矢野清人, 坂本塁, 濱田信一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:原発性腹膜癌は組織学的特徴や臨床所見, 治療成績が進行卵巣漿液性腺癌と非常に似ているため, 現時点ではそれに準じて取り扱われる. 治療の主軸は, 最大限の腫瘍減量手術とタキサン-プラチナ製剤の併用化学療法の組み合わせである. 卵巣癌と同様, 短期的な治療成績は良好であるが, 長期的な予後は依然不良である. 今回, 対照的な臨床経過を辿った2例の腹膜癌を経験した. 症例1は63歳で, 多量腹水と腹水細胞診で腺癌細胞を認め, 画像上右付属器領域の不整な嚢胞性腫瘍と右横隔膜下腫瘍を認めた. 進行卵巣癌の疑いで試験開腹したが両側卵巣は正常であり, S状結腸間膜に浸潤する嚢胞性腫瘍, 大網播種, および横隔膜下肝外性腫瘍を認めた. 第一次腫瘍減量手術(PDS)として, S状結腸合併切除, 子宮および両側付属器切除, 大網切除を施行した. 病理組織検査の結果, 腹膜漿液性乳頭状腺癌(PSCP)IIIc期と診断し, TC療法を3コース施行した後, 第二次腫瘍減量手術(IDS)にて右横隔膜下腫瘍を切除した. 術後TC療法を3コース追加して臨床的寛解となり, 経過は良好であった. 症例2は75歳で, 同様に多量腹水と腹水細胞診で腺癌細胞を認めた. 画像上播種と思われる右横隔膜下腫瘍と骨盤内の多発性腫瘤を認めたが, 原発巣は不明であり, 腹膜癌を疑った. 全身状態が不良で播種も広範囲なため, TC療法によるneoadjuvant chemotherapyを施行したが無効であり, 治療開始後わずか3カ月で死亡した. 2症例の理学所見には共通点が多かったが, 正反対の臨床経過を辿った.
ISSN:1882-482X