診断に難渋した胎児polycystic kidney diseaseの一症例
今回, 胎児スクリーニング目的の超音波検査において胎児の片側の腎臓に多嚢胞性病変を認め診断に難渋したpolycystic kidney diseaseの一症例を経験した. 症例は39歳, 1経産. 妊娠23週時に施行した胎児スクリーニング超音波検査において右腎臓は長軸3.4cmと大きく, 小嚢胞を多数認めた. 反対側の腎臓は正常で他の合併奇形は認めず, 児の発育も良好であった. 妊娠33週0日に施行した胎児MRI検査では, 胎児右腎臓に小嚢胞の集蔟を認め, 左腎の約3倍に腫大していた. 明らかな充実性腫瘍は認めず, polycystic kidney disease(PKD)またはmultic...
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Veröffentlicht in: | 現代産婦人科 2010, Vol.59 (1), p.99-105 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 今回, 胎児スクリーニング目的の超音波検査において胎児の片側の腎臓に多嚢胞性病変を認め診断に難渋したpolycystic kidney diseaseの一症例を経験した. 症例は39歳, 1経産. 妊娠23週時に施行した胎児スクリーニング超音波検査において右腎臓は長軸3.4cmと大きく, 小嚢胞を多数認めた. 反対側の腎臓は正常で他の合併奇形は認めず, 児の発育も良好であった. 妊娠33週0日に施行した胎児MRI検査では, 胎児右腎臓に小嚢胞の集蔟を認め, 左腎の約3倍に腫大していた. 明らかな充実性腫瘍は認めず, polycystic kidney disease(PKD)またはmulticystic dysplastic kidney(MCDK)が考えられた. しかし片側性で一般的なPKDの定義から除外されること, 超音波検査からは非常に小さい嚢胞と充実部分の混在のようにみえること, 超音波所見の経過からPKDに特徴とされる腎嚢胞の増大などを認めないことなどから, 嚢胞性病変よりも腫瘍性病変質にcongenital Mesoblastic nephroma(CMN)が考えられた. CMNであった場合には妊娠分娩経過中の腫瘍増大や腫瘍内出血の可能性も考えられること, 出生後の腫瘍摘出や血圧などの新生児管理が必要となるため, 妊娠34週1日に高次医療施設に母体搬送とした. 切迫早産の治療の後妊娠36週5日, 骨盤位のため帝王切開術で2836gの男児を娩出した. 児のApgar scoreは9点/9点, 全身状態は良好で排尿障害や呼吸哺乳障害も認めなかった. 軽度の高血圧を認めたが自然経過で改善し, 血液検査からも腎機能異常は認めなかった. 日齢1で施行したCT検査では右腎上極に6cm大の腫瘍があり, 造影効果に乏しく正常腎実質との境界が不明瞭であり腫瘍性病変が考えられた. 胎児期からの経過から腎腫大の速度は緩徐であり, 悪性腫瘍は考えにくく自然縮小も期待できた. しかし日齢14に施行したCTでも腫瘍径は変わらず, また腫瘍内の多発点状出血を認めたため, 日齢22に開腹手術を施行した. 正常腎との境界は明瞭で右腎部分切除術を施行し正常部分を温存できた. 術後病理での最終診断の結果は腫瘍性病変ではなくpolycystic kidney diseaseであった. 術後経過は良好であり, 術後9日目に退院し現在発達成長も良好である. |
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ISSN: | 1882-482X |