HPLCによるリポ蛋白LDLおよびHDLの測定
岐阜医療技術短期大学衛生技術学科1), 社会保険岐阜病院中央検査部2) 血清脂質の臨床検査は疾病の予防や診断治療に大きく寄与している. 近年血清脂質の主な成分である総コレステロール(TC), トリグリセライド(TG), HDLコレステロール(HDL-C)に加えて血清脂質のより詳細な検索が注目されている. すなわち, LDLコレステロール(LDL-C), リポ蛋白の小粒子化の構造異常解析などである. 我々はゲル濾過法を応用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いたリポ蛋白分析法を確立してリポ蛋白構造解析に関する有用な成績を得たので報告する. 材料と方法 検体は臨床生化学実習時に得られた...
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Veröffentlicht in: | 生物試料分析 2003, Vol.26 (1), p.120-120 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 岐阜医療技術短期大学衛生技術学科1), 社会保険岐阜病院中央検査部2) 血清脂質の臨床検査は疾病の予防や診断治療に大きく寄与している. 近年血清脂質の主な成分である総コレステロール(TC), トリグリセライド(TG), HDLコレステロール(HDL-C)に加えて血清脂質のより詳細な検索が注目されている. すなわち, LDLコレステロール(LDL-C), リポ蛋白の小粒子化の構造異常解析などである. 我々はゲル濾過法を応用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いたリポ蛋白分析法を確立してリポ蛋白構造解析に関する有用な成績を得たので報告する. 材料と方法 検体は臨床生化学実習時に得られた岐阜医療技術短生49名である. 学生にはこの実験への利用承諾を得ている. HPLC装置はLC-10A型(島津杜)で2ポンプを応用して, 先にリポ蛋白を分離した後コレステロール発色によるリポ蛋白ピークを検出する原理である. 血清脂質は生化学自動分析機(ミラクルエース919, ニプロ社)を用いて酵素法によって測定した. LDL-CおよびHDL-Cの測定は直接法(第一化学杜)である. 実験成績 1)HPLC機器構成 カラムはTSK gel Lipopropack XL 300x 7.5mm(東ソー社)2本を直列に用いた. 流離液はTSK eluent LP-1 0.6ml/min(東ソー社)である. サンプルは5μl, 流出時間は35分, カラム温度は25℃である. ポストカラム反応装置として, 反応コイル0.4mmIDx7.5m, 反応温度45℃, 検出波長は585nmである. 反応液はデタミナーLTCII(協和メデックス社)であり, R1 35ml, R2 15mlに精製水70mlを加えた. この試薬量で約10検体が分析できる. 分子量マーカーを用いた検量線はBSA 670kDaからチログロブリン670kDaまで直線関係にあった. HDL, LDLはそれぞれ27.7, 23.6分に検出できた. VLDLのピークは16.1分くらいに検出されるが, VLDL高値検体はLDLと充分な分離ができなかった. 2)LDL-CおよびHDL-Cの定量LDL-CおよびHDL-Cを直接法で測定した49検体を本法と比較した. LDL-Cの相関性はr=0.971, y=O.93x+13.1であった. 平均と標準偏差値はHPLC法(y)で112.1±23.7mg/dl, 直接法(x)で106.0±24.7mg/dlであった. HDL-Cの相関性はr=0.957, y=0.87x+5.0であった. 平均と標準偏差値はHPLC法(y)で64.6±11.1mg/dl, 直接法(x)で68.6±12.2mg/dlであった. 3)HPLC法から得られるリポ蛋白のサイズ情報本法の測定原理はゲル濾過である. カラム保有時間(分)であるリテンションタイムは粒子サイズと逆相関関係にある. リポ蛋白のリテンションタイムはLDL23.59±0.06分, HDL27.93±0.23分であった. HDLおよびLDLリテンションタイムすなわち小粒子化と各種脂質パラメーターとの相関性を検討した. 最も相関性の強かった因子はHDL小粒子化であり, HDL-Cとr=0.714, 総コレステロールとHDL-Cの比である動脈硬化指数, AIとr=0.617であった. トリグリセリドとはr=0.197であった. LDL小粒子化に関してはHDLほど強い相関性が得られなかった. 考察 リポ蛋白の構造異常の検査は超遠心機法, 電気泳動法, ゲル濾過HPLC法が応用される. 我々はゲル濾過法によるリポ蛋白LDLおよびHDLの分離を試みた. 一般的にLDL-CとHDL-Cは自動分析機の直接法によって測定される. LDL-CはTGが400mg/dl以下であればFW法が応用される. HPLCによるLDL-CとHDL-Cはいずれの方法とも良好な相関性が得られた. リポ蛋白サイズに関してはLDLよりもHDLのサイズが種々な脂質パラメーターと強い関連性が得られた. HDLサイズと主なパラメーターとの相関性はAIとr=0.617, HDL-Cとr=-0.714, LDL-Cとr=0.363, TGとr=0.197であった. LDLサイズに関してAIとr=0.282, HDL-Cとr=-0.247, LDL-Cとr=0.239, TGとr=0.032であった. HDLサイズは動脈硬化性疾患の新しい有力なマーカーになることが示唆されている. LDLに関する相関性よりもHDLと強い相関性が得られたことは, 検討した対象が健常者に限定していることや, HPLCによるカラム分離性能がLDLの大きい粒子の分離に限界があるとも思われる. まとめHPLC法によるリポ蛋白解析でLDLおよびHDLに関する多変量な情報が得られた. HDL小粒子化が低HDL-CやAIと強い相関関係を認められたことは極めて興味ある成績である. また弱いながらTGと相関性が見られたことはリポ蛋白の小粒子化の過程にTG代謝が関与する成績である. VLDLが高値の検体ではVLDLとLDLの分離が充分でなくLDL-C値に若干の誤差を生じると思われた. 文献 Okazaki M, et al:Clin Chem, 43, 1885-1890, 1997 |
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ISSN: | 0913-3763 |