蛍光プレートリーダーAscentを用いた赤血球内ソルビトール測定法の検討

糖尿病により高血糖状態が持続すると, ポリオール代謝経路が活性化し, 細胞内ソルビトールの蓄積による細小血管障害の一因として, その測定意義は臨床的に高いと言われている. しかし, 測定は従来より篠原ら1)の方法に基づいた用手法で行なわれており, 操作が煩雑で, 安定した測定法とは言い難いところがあった. 今回, 我々は蛍光強度の自動測定機Ascent(大日本製薬)を用いた赤血球内ソルビトール測定法を検討し, 若干の知見を得たので報告する [測定原理] 赤血球を浸透圧的に破壊し, 除蛋白操作を行なった赤血球処理液を, NAD及びソルビトール脱水素酵素(SDH)存在下で酵素反応を行ない, 生成し...

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Hauptverfasser: 中村寛, 牧瀬淳子, 中島公雄, 木嶋祥麿, 中島茂, 中豊, 松林直
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:糖尿病により高血糖状態が持続すると, ポリオール代謝経路が活性化し, 細胞内ソルビトールの蓄積による細小血管障害の一因として, その測定意義は臨床的に高いと言われている. しかし, 測定は従来より篠原ら1)の方法に基づいた用手法で行なわれており, 操作が煩雑で, 安定した測定法とは言い難いところがあった. 今回, 我々は蛍光強度の自動測定機Ascent(大日本製薬)を用いた赤血球内ソルビトール測定法を検討し, 若干の知見を得たので報告する [測定原理] 赤血球を浸透圧的に破壊し, 除蛋白操作を行なった赤血球処理液を, NAD及びソルビトール脱水素酵素(SDH)存在下で酵素反応を行ない, 生成したNADHを蛍光測定(励起波長355nm, 蛍光波長460nm)する. [測定試薬及び機器] 分離試薬1(NaOH水溶液), 分離試薬2(ZnSO4水溶液), 反応試薬(NAD, SDHを含む凍結乾燥品), ブランク試薬(NADを含む凍結乾燥品), 溶解液(グリシン緩衝液), 標準液(ソルビトール濃度0, 20, 40, 80nmol/ml), 蛍光プレートリーダー(大日本製薬/Ascent) [操作法] (1) 検体はEDTA, 2K入り採血管で2ml採血後, 1200×gで10分間遠心を行ない, 赤血球層より200μlを採取し試験管に移す. これに精製水1ml, 分離液1を200μl, 分離液2を200μl加えて激しく攪拝し, 1200×gで10分間遠心を行ない, 得られた上清を検体溶液とした. 標準液は200μlを採取し同様の操作を行ない, 上清を標準溶液とした. (2) 反応試薬及びブランク試薬に溶解液を所定量加え調整した後, Ascentにセットした. (3) 各標準溶液及び検体溶液をプレートの2箇所にそれぞれ200μlずつ分注し, Ascentにて蛍光強度を測定し検体ブランクを差し引いて, 標準液をもとにソルビトール濃度を測定した. (4) 分離液を加える前の各検体の赤血球層から検体を一部採取し, ヘモグロビン濃度を測定し, ヘモグロビン1gあたりのソルビトール量を算出してソルビトール値(nmol/g, Hb)とした. [結果] (1) 測定精度: 異なる3濃度の検体(L, M, H)を用いた9~10回の同時再現性および7日間の日差再現性を求めた結果, CV値(%)はそれぞれ4.1, 3.7, 6.6および6.8, 4.2, 2.6と良好な精度が得られた. (2) タイムコース: 標準液および検体を用いた反応後のタイムコースは, 30分から60分にかけてほぼプラトーに達したが, 反応時間は30分に設定した. (3) 検体前処理時の遠心条件: 採血管から赤血球層を分取する際の遠心条件を3000rpm(1200×g)まで検討した結果, 2500rpm以下では高値に測定されたため, 3000rpmと設定した. (4) 回収試験: ソルビトール添加濃度20, 40, 60nmnol/lを用いた回収率は, 100, 7~110%と良好であった. (5) 共存物質および他の糖類の影響: 1000mg/dlまでの糖類(グルコース, マルトース, マンニトール, キシリトール, スクロース)の中で, キシリトール, マンニトールで影響が認められたが, 通常の生体中の濃度では問題は無かった. また, 他の共存物質の影響は認められなかった. (6) 従来法との相関: 蛍光光度計「(日立/F4010)を使用した従来法との相関はy=1.0192x-1.75, r=0.9889(n=60)と良好であった. [考察] 蛍光プレートリーダーAscentを用いることにより赤血球内ソルビトールの測定は, 少量の検体で比較的簡易に多数の検体を同時に安定して測定できるようになった. 一部にブランク試薬エラーや, 原因の特定できないエラーが発生することがあるが, 機器のエラーチェック機構とタイムコースを確認することでチェックが可能であった. 細胞内ソルビトールの測定は糖尿病合併症の中で, 特に糖尿病性神経障害における臨床的有用性が期待されており, 今後, 症例を増やして検討したい. [文献] 1) Rikio Shinihara et al : Glin Chim Acta 273 : 171-184, 1998
ISSN:0913-3763