糖尿病性腎症の診療に有用な臨床検査

糖尿病(DM)は, インスリンの絶対, 相対的不足により, 糖代謝異常を持続的に呈する疾患である. 栄養分のブドウ糖の利用効率が低下し, しかも血糖が上昇して尿中に漏れてくる全身の病気で, 全身の臓器, 組織障害を起こす慢性合併症(=血管合併症)である. DMに合併する腎, 尿路疾患で第一にあげられるのは, DM細小血管症によるDM腎症であり, DM特有の合併症である. DM腎症は腎糸球体毛細管が障害された病態で, 高血糖状態が持続すると基底膜周辺でもglycationは高まり, しかもフリーラジカルの出現で糸球体基底膜の損傷は拡大する1). 初期は無症状, 無症候であるが, 増悪すると微量ア...

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Veröffentlicht in:生物試料分析 2000-12, Vol.23 (5), p.401-408
Hauptverfasser: 前畑英介, 矢野正生, 足達悦子, 中島千絵, 橋本陽子, 武田良江, 下村弘治, 柴輝男, 山門実, 畠山郁夫, 金城則之, 足立哲夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:糖尿病(DM)は, インスリンの絶対, 相対的不足により, 糖代謝異常を持続的に呈する疾患である. 栄養分のブドウ糖の利用効率が低下し, しかも血糖が上昇して尿中に漏れてくる全身の病気で, 全身の臓器, 組織障害を起こす慢性合併症(=血管合併症)である. DMに合併する腎, 尿路疾患で第一にあげられるのは, DM細小血管症によるDM腎症であり, DM特有の合併症である. DM腎症は腎糸球体毛細管が障害された病態で, 高血糖状態が持続すると基底膜周辺でもglycationは高まり, しかもフリーラジカルの出現で糸球体基底膜の損傷は拡大する1). 初期は無症状, 無症候であるが, 増悪すると微量アルブミンが出現し, 次第に腎機能の低下とともに高血圧, 浮腫などを伴い腎不全へと進展し, 予後不良な慢性合併症と云われてきた2). 早期腎症のマーカーに尿中微量アルブミンの測定が不可欠であり, 病態の把握がポイントとなる. 病態の程度はMogensenら(1983年)3)のI型DMによる病期分類が広く知られ, その識別には, この表示を基本とする. 厚生省研究班(1990年)は微量アルブミン尿の診断基準を答申し, 時間尿(24時間尿, 夜間尿, 昼間安静時尿)を対象とした尿アルブミン排泄率(Albumin excretion rate: AER)を推奨した. 一方, 欧米では外来時の随時尿(スポット尿)を用いて実用的な尿アルブミン排泄指数(Albumin excretion Index: AEI)を利用していることもあって, 1997年微量アルブミン尿会議が開催され, 標準化を模索され始めた4).
ISSN:0913-3763