マウスへの乳酸アルミニウム長期投与の学習, 記憶におよぼす影響とベタインの治療効果
【目的】ここ数年, アルミニウムが痴呆のひとつ, アルツハイマー病の原因となるといわれている. アルツハイマー病患者の脳からアルミニウムが検出され, アルミ製品などから溶出するアルミニウムの危険性も指摘されている. また, アルツハイマー病ではアセチルコリンの濃度が低下することが知られており, このことはアセチルコリンの供給が, アルツハイマー病発症抑制または治療に有用である事を示唆している. そこでアセチルコリンの供給原料としてベタインに着目した. これは体内で還元され, ベタイン→コリン→アセチルコリンという代謝経路が想定される. 我々はこのアルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすことを...
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Veröffentlicht in: | 生物試料分析 1999, Vol.22 (1), p.75-75 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】ここ数年, アルミニウムが痴呆のひとつ, アルツハイマー病の原因となるといわれている. アルツハイマー病患者の脳からアルミニウムが検出され, アルミ製品などから溶出するアルミニウムの危険性も指摘されている. また, アルツハイマー病ではアセチルコリンの濃度が低下することが知られており, このことはアセチルコリンの供給が, アルツハイマー病発症抑制または治療に有用である事を示唆している. そこでアセチルコリンの供給原料としてベタインに着目した. これは体内で還元され, ベタイン→コリン→アセチルコリンという代謝経路が想定される. 我々はこのアルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすことを, マウスを用いたモデルの作製で試みた. そしてアルミニウム投与時のベタインの影響を体重, および行動薬理学的に調べ, 若干の知見が得られらたので報告する. 【方法】マウスを3群に分け, 乳酸アルミニウム(和光純薬;10mg/10ml/kg/day投与群(アルミニウム群), 乳酸アルミニウム(10mg/10ml/kg/day)とベタイン(日本甜菜糖)水溶液(5g/50kg/day)を飲用として投与群(ベタイン群), および生理食塩水(10ml/kg/day)投与群(コントロール群)とした. 適宜体重測定を行い, 行動薬理学的調査を行った. 【結果】各群の体重変化を比較したところ, コントロール群とアルミニウム群に対してベタイン群ではとくに体重の増加をみた. コントロール群とアルミニウム群の間に有意差は認められなかったが, コントロール群とベタイン群では投与開始後, 3週目から10週日に有意差を認めた. また, ベタイン群とアルミニウム群の間では, 投与開始後3週目から11週目, 16週目から25週日ごろに有意な差を認めた. オープンフィールドテストにおいて検討を行った結果, コントロール群, アルミニウム群, およびベタイン群の3群間に明らかな差は認められなかった. 受動的回避学習法においては, 訓練試行時の電気ショックに対する感受性は3群間でほとんど差は認められなかった. さらに, step down latencyについては, コントロール群と比較してアルミニウム群およびベタイン群に有意な変化は認められなかったものの減少傾向を示した. 【考察】体重はコントロール群とアルミニウム群はほぼ同程度であったが, ベタイン群は有意差は認められないが, 10~20%多かった. ベタイン群は投与開始3週目頃から差を認めた. これは, ベタインが, 旨み成分を含んでいて, マウスの食欲を増進したことが考えられる. まず, マウスをオープンフィールドに置いた時の自発運動試験を行った. 10~20分後, 洗顔運動や体を舐めるなどの動作が観察された. しかし, 3群間では, その行動に明らかな差は認められなかった. 受動的回避学習法によりアルミニウム長期投与の学習, 記憶に及ぼす影響について検討したところ, step down latencyに有意な変化は認められなかったものの減少傾向が認められた. 但し, コントロール群における値が通常は150前後を示すのに対し, 73と低い値が観察された. そこで再度試験を行ったが, マウスは経験があるため, コントロール群において300を示す結果となった. アルミニウム群およびベタイン群においても同様の傾向を示し, 各群間で有意な差は認められなかった. さらにこの試験においてはプラットホームが安全な場所であるとマウスが記憶すると仮定し, 一度下りたプラットホームに戻るまでの時間を記憶保持時間の指標としてみたが差は認められなかった. 受動的回避学習試験における対照(コントロール)群の値が通常よりも低値を示すという事実が老齢によるものであるかは不明であるが, もう少し早い段階でのアルミニウム長期投与のおよぼす影響を検討する必要があると考えられる. 謝辞:本研究にあたり行動薬理学的検討を頂きました名城大学薬学部亀山勉教授, 平松正行先生始め薬品作用学研究室の諸氏に深謝いたします. |
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ISSN: | 0913-3763 |