国立療養所菊池恵楓園における過去18年間の死因統計の検討

はじめに 高齢化し特殊な人口構成のハンセン療養所入園者における死亡原因となる疾患を医療統計的に分析し, 今後の医療や保健の指針とするために, 当園における過去18年間の死因疾患を解析検討した. 患者および方法 昭和55年1月から平成9年12月までの18年間の死亡診断書をもとに, 当園における各年度で5才単位の年齢階層別に疾患別死亡数を調査し分析した. さらに悪性新生物について平成8年までの各年度の死亡数を観測値とし, 対応する全国統計資料を基準として, 間接法により標準化死亡比(SMR)を求め全国資料と比較検討した. 結果 過去18年間の恵楓園での集計では悪性腫瘍(がん)による死亡が第1位(1...

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Veröffentlicht in:日本ハンセン病学会雑誌 1998-03, Vol.67 (1), p.62-62
Hauptverfasser: 村上明利, 由布雅夫, 有馬幸一, 赤木純児, 庄野昌博
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:はじめに 高齢化し特殊な人口構成のハンセン療養所入園者における死亡原因となる疾患を医療統計的に分析し, 今後の医療や保健の指針とするために, 当園における過去18年間の死因疾患を解析検討した. 患者および方法 昭和55年1月から平成9年12月までの18年間の死亡診断書をもとに, 当園における各年度で5才単位の年齢階層別に疾患別死亡数を調査し分析した. さらに悪性新生物について平成8年までの各年度の死亡数を観測値とし, 対応する全国統計資料を基準として, 間接法により標準化死亡比(SMR)を求め全国資料と比較検討した. 結果 過去18年間の恵楓園での集計では悪性腫瘍(がん)による死亡が第1位(162例, 32.3%)であり, ついで心疾患(84例, 16.7%), 肺炎, 気管支炎(60例12.0%), 脳血管疾患(52例, 10.4%)の順であった. 年次別推移では, 昭和55, 56, 59年での第2位を除いて, がんが第1位であった. 次いで, 心疾患が多く, 昭和55, 56, 63年に第1位であり, 昭和58, 61, 62年, 平成1, 2, 5, 7, 8年で第2位であった. この結果は全国例と同様の傾向であったが, 肺炎, 気管支炎の頻度は全国例に比べて高く, 平成3, 4, 6, 9年では第2位であった. がんについてのSMRでは, 昭和55, 59年を除いて常に1より高値(1.03-2.38)であった. がんの臓器別頻度は18年間の集計では肝臓がんが最多(48例, 29.6%)で, 次いで肺, 気管支がん(29例, 17.9%), 胃がん(25例, 15.4%)の順であり, 全国例と大きな違いがあった. 年度別推移では, 昭和55, 57, 58, 63年に胃がんが最多であったが, 平成1年から9年までは, 2年の第2位を除いて, 常に肝がんが第1位であった. 肺, 気管支がんも高頻度であり, 昭和59, 62年, 平成2, 3, 6年に第1位であった. 結論 全国例と同様に当園の患者においても悪性腫瘍が第1位の死因であり, その頻度は全国例より高率であった. 臓器別では肝がんが最多で全国例と大きな差があり, 次いで肺, 気管支がんが高頻度であった. がん以外では, 肺炎, 気管支炎が死因としての頻度が全国例より高かった. 以上よりこれらの疾患についての積極的な早期発見早期治療が今後の課題と思われる.
ISSN:1342-3681