脳梗塞症例におけるCerebral Microbleedsの臨床像

[緒言] CMB(Cerebral microbleeds)は, 脳ドックなどで指摘された場合, 脳卒中へ進行する可能性が報告されているが, 治療介入や患者指導においてその意義は不確定である. [対象と方法] 今回我々は, 当科に脳梗塞で入院した症例のCMBの数と分布を調べ, 同時に脳出血や脳梗塞の誘因となる基礎疾患について整理し, CMBの臨床像について検討した. [結果] 2016年1月から12月に脳梗塞で入院した症例は183例おり, 発症急性期に1.5テスラMRIでのT2*強調画像が得られた162例を対象とした. CMBは59例(36.4%)に認めた. CMB陽性例は男性(p=0.035...

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Veröffentlicht in:東京女子医科大学雑誌 2018/06/25, Vol.88(3), pp.90-97
Hauptverfasser: 渡邉, 真由, 黒井, 康博, 糟谷, 英俊
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:[緒言] CMB(Cerebral microbleeds)は, 脳ドックなどで指摘された場合, 脳卒中へ進行する可能性が報告されているが, 治療介入や患者指導においてその意義は不確定である. [対象と方法] 今回我々は, 当科に脳梗塞で入院した症例のCMBの数と分布を調べ, 同時に脳出血や脳梗塞の誘因となる基礎疾患について整理し, CMBの臨床像について検討した. [結果] 2016年1月から12月に脳梗塞で入院した症例は183例おり, 発症急性期に1.5テスラMRIでのT2*強調画像が得られた162例を対象とした. CMBは59例(36.4%)に認めた. CMB陽性例は男性(p=0.0351), 高血圧(p=0.0152), ラクナ梗塞(p=0.0489)に有意に多くみられた一方, 出血素因を持つ症例(p=0.4912), 抗血栓薬内服例(p=0.5148)との関連は見られなかった. 入院時の採血よりEGFR(推定糸球体濾過量)を算出すると, CMB陽性例で有意にEGFRの低下が認められた(57.9±22.4 mL/min vs 66.3±24.6 mL/min, p=0.0276). この背景には, 高血圧を基盤とした脳と腎臓の細小血管障害の関連が示唆された. 脳血管主幹部に狭窄がある症例においてその灌流領域を虚血領域と定義したところ, その内外でのCMB発現数に差を認めず(虚血領域内2.5±6.2個, 虚血領域外3.4±4.3個, p=0.5672), CMBの成因に脳虚血が強く関連している可能性は否定的であった. 62例中4例と少数例であるが, CMBが皮質下に限局して見られる症例があり, 有意に女性に多かった(p=0.0346). CMBは, ラクナ梗塞と同様, 慢性的な高血圧負荷により穿通枝領域に脂肪硝子変性が生じ, その結果ヘモジデリンが血管外へ漏出することが主な機序として考えられている. その一方, 高齢女性に特徴的な脳アミロイド血管症も, 機序が異なるものの脳皮質下を中心として同様にCMBとして認められる. 前者においては, 高血圧ならびに慢性腎臓病の合併のリスクが示唆される. [結語]脳梗塞症例において, CMB陽性例は男性, 高血圧, ラクナ梗塞に有意に多かった. また, 脳深部型CMBは高血圧と慢性腎臓病のマーカーとなりうることが示唆された.
ISSN:0040-9022
2432-6178
DOI:10.24488/jtwmu.88.3_90