甲状腺における末梢幹細胞と組織再生機構
多様な細胞に分化可能な幹細胞は骨髄造血組織において発見されたが, 多くの組織に存在することが推測されている. 最近になり成体マウス下垂体や甲状腺組織においても, side population細胞分離やneurosphere法で, 骨髄幹細胞や神経幹細胞に特異的な遺伝子を発現する細胞群が同定された. このような細胞では組織特異的転写因子の発現は通常は抑制されているが, 組織再生時に再度発現が誘導されるがその機構は不明である. 私たちは甲状腺組織が塩基性線維芽細胞成長因子(βFGF)を含むこと, βFGFが甲状腺細胞の分化を抑制し, 増殖を促進することを明らかにした. ES細胞においてはその自己...
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Veröffentlicht in: | 東京女子医科大学雑誌 2006-02, Vol.76 (2), p.99-100 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 多様な細胞に分化可能な幹細胞は骨髄造血組織において発見されたが, 多くの組織に存在することが推測されている. 最近になり成体マウス下垂体や甲状腺組織においても, side population細胞分離やneurosphere法で, 骨髄幹細胞や神経幹細胞に特異的な遺伝子を発現する細胞群が同定された. このような細胞では組織特異的転写因子の発現は通常は抑制されているが, 組織再生時に再度発現が誘導されるがその機構は不明である. 私たちは甲状腺組織が塩基性線維芽細胞成長因子(βFGF)を含むこと, βFGFが甲状腺細胞の分化を抑制し, 増殖を促進することを明らかにした. ES細胞においてはその自己複製にβFGFが重要な役割を果たしており, 神経幹細胞の特徴であるneurosphere形成にβFGFが必要である. よって, 甲状腺組織の幹細胞の維持と複製にもβFGFが重要な役割を果たしている可能性が示唆され検討を行った. 正常ラット甲状腺濾胞細胞由来の株化細胞であり, TSH依存性の増殖を示すFRTL5細胞を用いた. βFGFはTSHにより誘導される甲状腺特異遺伝子である, ヨードシンポーター(NIS), 甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)遺伝子発現を抑制した. βFGFによりTSH非存在下でFRTL5細胞を増殖させると, 甲状腺特異的転写因子であるTTF-1およびPAX-8の遺伝子発現が減弱した. また, 高濃度のβFGFで処理した細胞は幹細胞で発現が報告されているNanog, Oct4mRNAを発現し, βFGFによる未分化の状態への退行が示唆された. しかし, βFGFの除去とTSHの添加のみではこれらの未分化な細胞における甲状腺特異転写因子(TTF-1, PAX-8)の発現は認められず, 何らかの分化誘導が必要なことが判明した. よって, 各種分化誘導因子およびコラーゲンマトリックスによる立体培養を用いて再分化誘導を行い, 甲状腺における再生と分化の機構について検討した. |
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ISSN: | 0040-9022 |