表面型早期大腸癌にみられた粘膜下層浸潤部における組織学的低分化傾向に関する臨床病理学的検討

〔目的〕大腸sm癌の粘膜下層における組織学的分化度を観察し, 腫瘍形態による比較検討を行った. 〔対象および方法〕1988年から1994年に切除された大腸sm癌131症例を対象とした. 形態および分化度の分類は大腸癌取り扱い規約に準じ, 癌の分化度を高分化腺癌(w), 低分化腺癌(p)に分類し, 中分化腺癌に関しては高分化腺癌と同様のwに分類した. それに基づき, 粘膜内(M) 粘膜下層(S)ともに高分化腺癌であるMwSw, 粘膜内が高分化腺癌であるが粘膜下層が低分化腺癌であるMwSpに分類した. 粘膜内に低分化腺癌を示すMpSwおよびMpSpに該当する症例はなかった. K-rasコドン12点...

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Veröffentlicht in:東京女子医科大学雑誌 2002-08, Vol.72 (7/8), p.278-279
1. Verfasser: 鈴木麻子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔目的〕大腸sm癌の粘膜下層における組織学的分化度を観察し, 腫瘍形態による比較検討を行った. 〔対象および方法〕1988年から1994年に切除された大腸sm癌131症例を対象とした. 形態および分化度の分類は大腸癌取り扱い規約に準じ, 癌の分化度を高分化腺癌(w), 低分化腺癌(p)に分類し, 中分化腺癌に関しては高分化腺癌と同様のwに分類した. それに基づき, 粘膜内(M) 粘膜下層(S)ともに高分化腺癌であるMwSw, 粘膜内が高分化腺癌であるが粘膜下層が低分化腺癌であるMwSpに分類した. 粘膜内に低分化腺癌を示すMpSwおよびMpSpに該当する症例はなかった. K-rasコドン12点突然変異の検出はPCR-RFLP法を用いた. p53蛋白過剰発現の検出は免疫組織化学染色で行い, 腫瘍腺管の細胞核が25%以上, 腫瘍の1/3以上の面積に認められる場合を陽性とした. 統計学的検討にはunpaired t testおよびMann-Whitney U testを用い, 危険率が片側5%以下を有意とした. 〔結果〕MwSpの腫瘍は隆起型には認められず, 有意に表面型に多く, 全体の46%(6/131例), 表面型の12.2%(6/49例)であった. また, 腫瘍の最大径はMwSw群で14.5+5.9mm, MwSp群で142+12.6mmと特に差は認められなかった. 表面型の24.5%(12/49)にリンパ管侵襲, 18.4%(9/49)に静脈侵襲を認め, 隆起型では, リンパ管侵襲7.3%(6/82例), 静脈侵襲7.3%(6/82例)であり, リンパ管侵襲は表面型に有意に高率であった. 表面型のうち, 分化度別では, MwSwのリンパ管侵襲18.6%(8/43例), 静脈侵襲16.2%(7/43例)で, MwSpのリンパ管侵襲66.7%(4/6例), 静脈侵襲33.3%(2/6例)とリンパ管侵襲はMwSpが有意に高率であった. MwSpにおけるK-rasコドン12点突然変異は33.3%, p53蛋白過剰発現は66.6%であった. 〔考察〕MwSpは形態分類上は全て表面型で, 表面型癌全体の12.2%(6/49例)に相当した. 腫瘍の最大径はMwSp群, MwSw群間に差は認められず, この低分化傾向は側方進展に関する積極的な因子とは考えにくかった. 脈管侵襲を見ると, 表面型癌が, 隆起型癌に比し有意なリンパ管侵襲を認め, 更に, 表面型の中でもMwSpはMwSpに比して有意なリンパ管侵襲があり, MwSpのリンパ管侵襲が早い時期に起こることが示唆された. これはMwSpの高浸潤性を示すものと思われ, 表面型癌の中には隆起型癌に比べ急速に発育進展するものがあり, その一因が粘膜下層浸潤の段階で低分化癌に変化することであることを示した. 〔結論〕早期表面型大腸癌における急速な組織学的分化度の低下は, 浸潤性の獲得に寄与する因子のひとつである可能性が示唆された.
ISSN:0040-9022