膝OA患者の前額面からの歩行動作解析

軽症の変形性膝関節症(膝OA)の保存治療は従来, 膝関節伸展筋力の増強を目的とした運動療法が主流であった. しかし, 近年では, 歩行動作などを機能的に改善するアプローチが注目されている. そのような背景から, 運動療法によって増強された筋力が機能的動作にどのように影響を及ぼすかの理解は重要と考えられる. 膝OA患者の歩行に関しては, 可動域制限や痛みに起因する歩幅低下を伴う歩行速度の低下が報告されている. その要因としては股関節屈曲, 伸展や足関節底屈モーメントの低下などの矢状面上からの解析が行われているが, 前額面上での解析結果は少ない. しかし, 膝OAに特徴的な形態的変形および歩行時の...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Hauptverfasser: 内藤健二, 鳥居俊, 倉持梨恵子
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:軽症の変形性膝関節症(膝OA)の保存治療は従来, 膝関節伸展筋力の増強を目的とした運動療法が主流であった. しかし, 近年では, 歩行動作などを機能的に改善するアプローチが注目されている. そのような背景から, 運動療法によって増強された筋力が機能的動作にどのように影響を及ぼすかの理解は重要と考えられる. 膝OA患者の歩行に関しては, 可動域制限や痛みに起因する歩幅低下を伴う歩行速度の低下が報告されている. その要因としては股関節屈曲, 伸展や足関節底屈モーメントの低下などの矢状面上からの解析が行われているが, 前額面上での解析結果は少ない. しかし, 膝OAに特徴的な形態的変形および歩行時の膝関節側方動揺が前額面上での異常であることから, 歩行動作を前額面上から解析する意義は大きいと言える. 演者らの行った先行研究により, 下肢の前額面上の安定性に関与するとされる股関節内転, 外転筋力訓練を含めた長期的な介入後に, 歩行時の痛みの改善や歩幅の増加をみせた被験者で患側の内転/外転筋力比が内転筋優位に傾いたことから, 我々は膝OA患者の歩行時に, 特に股関節内転筋が異常動作や痛みの抑制に貢献しているのではないかと考えている. そこで, その仮説を証明するために前額面に注目した膝OA患者の歩行動作の解析を行った. その結果, 内転筋力の弱い被験者で側方動揺がみられたり, 歩行時立脚期中に大きく膝関節が内反する様子が見られた. また, 外転筋力が弱い被験者でも, 着地時に膝関節の前額面上での動揺に伴って肩峰の垂直位置が下がる現象が見られた. 以上のことから, 股関節内転, 外転筋力による前額面上での安定性の制御が, 膝OA患者の異常歩行の抑制に大きく影響を与えている可能性が示唆された. さらに下肢の回旋や上肢の動きも含めた詳細な解析を行って, 股関節の筋力がどのように膝OA患者の歩行動作に影響を与えているのかを明らかにしていく必要がある.
ISSN:0040-9022