生殖補助医療と生命倫理 ―世界と日本
生殖医療をはじめとする先端的な生命科学研究は, 先進国中心で進められてきた. 日本を除けばその大半はキリスト教圏の出自であるため, 生殖医療に関する倫理問題の形態には, キリスト教的価値が色濃く反映してきた. カトリックの教えに従えば, 神の恩寵によって男女の間に愛がめばえて結婚し, セックスを介して妊娠し, 受胎の瞬間に神から別々に魂が吹き込まれて人は生まれてくる. これが, 胎児が人間と同格の存在とされる論拠であり, それゆえに人工妊娠中絶は禁止されてきた. これに抗して1960年代末以降, フェミニズム運動が起こり, 中絶の合法化が実現されてきた. この中絶論争過程で, どこから人間が始...
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Veröffentlicht in: | Journal of Mammalian Ova Research 2010-04, Vol.27 (2), p.S2-S2 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 生殖医療をはじめとする先端的な生命科学研究は, 先進国中心で進められてきた. 日本を除けばその大半はキリスト教圏の出自であるため, 生殖医療に関する倫理問題の形態には, キリスト教的価値が色濃く反映してきた. カトリックの教えに従えば, 神の恩寵によって男女の間に愛がめばえて結婚し, セックスを介して妊娠し, 受胎の瞬間に神から別々に魂が吹き込まれて人は生まれてくる. これが, 胎児が人間と同格の存在とされる論拠であり, それゆえに人工妊娠中絶は禁止されてきた. これに抗して1960年代末以降, フェミニズム運動が起こり, 中絶の合法化が実現されてきた. この中絶論争過程で, どこから人間が始まるかという問いが, 政治的に重要課題となり, 激論が重ねられてきた. 「人間の発生過程への教義的焦点化」というこの事態から生命倫理研究も強く影響を受けてきた. そんな中, 1978年に世界初の体外受精児が生まれると, 欧米社会に衝撃が走った. |
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ISSN: | 1341-7738 |