網膜発生過程におけるON型双極細胞と病変網膜の電気生理学的解析

「1. 導入」「1-1. はじめに」眼は視覚系の始点であり, 眼の奥にある網膜は外界からの光刺激を受容し, 視覚情報の初期処理を行い, 脳へと視覚情報を送り出している. 視覚情報を基に, 私たちはものの色や大きさ, 動きや距離を知ることができる. したがって, 視覚情報は私たちにとって大変重要な情報であるが, その情報処理の仕組みについてはいまだ完全には解明されていない. 本総説では, 網膜の構造と機能の基本について視覚情報のON・OFF経路を中心に説明し, 網膜情報処理の解析手法である電気生理学的解析とそのデータ処理方法について概説した後, 病変網膜で検出される振動現象 (オシレーション) について紹介したい. 「1-2. 網膜の構造とそれぞれの働き」脊椎動物の網膜は, 視細胞, 水平細胞, 双極細胞, アマクリン細胞, 神経節細胞という5種類の神経細胞とミュラー細胞という1種類のグリア細胞からなり, それらが整然とした層構造を形成している.