乳酸菌発現系を利用した粘膜ワクチンへの応用展開

「1. 免疫抗原運搬体としての乳酸菌の役割」乳酸菌は, Lactobacillus属, Lactococcus属, Pediococcus属, Leuconostoc属などに代表されるグラム陽性細菌群であり, ヒトを始め各種動物の口腔・腸管・粘膜に存在する微生物の1つである. また乳酸菌は, 古来よりヨーグルトやチーズなどの乳製品, ぬか漬けやキムチなどの漬物, 清酒など酒類の製造に寄与し, 産業上でも重要な微生物と言える. このように長期間にわたりヒトに摂取されてきた乳酸菌はヒトに対する安全性が高いことを示している. 1)乳酸菌に関する研究は, ヒトや動物の健康増進における乳酸菌の有効性を明からにしつつある.2,3) すなわち乳酸菌は, それ自体が保健効果を示す有用微生物である. 従来から, 乳酸菌は整腸剤としての医薬品用途に使用されているほか, 特定保健用食品・機能性食品へも応用展開されている.4) このように乳酸菌自体の機能性に着目した研究が進む一方で, 遺伝子組換え技術の進展は, 目的タンパク質を蓄積するような組換え乳酸菌の作出を可能にしている.5)