6. ベトナムの農村地域に住む小学生児童における貧血と血清セレン濃度との関連（pp.454-459）

貧血と微量栄養素の欠乏との関連を検討するために, ベトナムの農村部の小学生の児童292人を対象にして横断的な研究を行った. 血清鉄, 亜鉛, マグネシウム濃度は誘導結合プラズマ質量分析法, レチノール濃度は高速液体クロマトグラフィー, 全血のヘモグロビン濃度はシアンメトヘモグロビン法により測定した. 対象児童における低血清亜鉛, セレン, マグネシウムおよび銅濃度の割合は, それぞれ91.4％, 75.6％, 59.5％, 8.6％であった. また, 児童の45％に貧血, 11.3％に血清ビタミンA濃度の低下がみられた. 貧血と有意な関係があったのは血清セレン＜70μg/mLであった（オッズ比1.85, 95％信頼区間1.06-3.24, p＜0.05）. さらに, 血清レチノール＜1.05μmol/L（オッズ比2.05, 95％信頼区間1.25-3.36, p＜0.01）および年齢（オッズ比1.59, 95％信頼区間1.16-2.18, p＜0.01）も貧血と有意な関連が認められた. 今回の結果より, ベトナムの小学生では, 血清セレン濃度の低下と貧血が関連していることが示唆された. 貧血の予防および治療におけるセレンの役割を明らかにするためにさらなる研究が必要である.