1. 新規リソソーム酵素としてのN-アシルエタノールアミン水解酸性アミダーゼの性状解析(第318回会議研究発表要旨,脂溶性ビタミン総合研究委員会)
N-アシルエタノールアミンは脂肪酸とエタノールアミンが縮合したアミド化合物であり, 動物組織中に微量成分として普遍的に存在する. 様々な生物活性が報告されているが, 中でもアナンダミド(必須脂肪酸のアラキドン酸のエタノールアミド)はカンナビノイド受容体のアゴニストとして作用し, マリファナ様生物活性を示す. N-アシルエタノールアミンは脂肪酸とエタノールアミンに加水分解されて活性を失う. 我々はこの反応を触媒する酵素のひとつとして「N-アシルエタノールアミン水解酸性アミダーゼ(NAAA)」を発見し, ヒト, ラット及びマウスからcDNAクローニングに成功した. 今回, NAAAの発現部位と構造...
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Veröffentlicht in: | ビタミン 2008/06/25, Vol.82(5-6), pp.353 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | N-アシルエタノールアミンは脂肪酸とエタノールアミンが縮合したアミド化合物であり, 動物組織中に微量成分として普遍的に存在する. 様々な生物活性が報告されているが, 中でもアナンダミド(必須脂肪酸のアラキドン酸のエタノールアミド)はカンナビノイド受容体のアゴニストとして作用し, マリファナ様生物活性を示す. N-アシルエタノールアミンは脂肪酸とエタノールアミンに加水分解されて活性を失う. 我々はこの反応を触媒する酵素のひとつとして「N-アシルエタノールアミン水解酸性アミダーゼ(NAAA)」を発見し, ヒト, ラット及びマウスからcDNAクローニングに成功した. 今回, NAAAの発現部位と構造について検討した. まず, 免疫組織化学法によりラットにおける発現部位を検討した. 諸臓器中NAAAの発現レベルが最高値を示した肺では, NAAAは主として肺胞マクロファージで検出された. マクロファージ内部ではリソソームに局在していた. 脳においても陽性細胞は主として脳室内のマクロファージであった. 次に部位特異的変異法により, NAAAの糖鎖結合部位として4ケ所のアスパラギン残基を同定した. また, 本酵素のペプチド鎖は1ケ所で限定分解を受けるが, 組換え体をHEK293細胞で過剰発現させるとその一部は限定分解されずにそのまま細胞外へ放出された. この前駆体のin vitroでの限定分解は4.5前後のpHで特異的に生じ, その結果酵素活性が増大した. したがって限定分解はリソソーム内で生じる成熟過程であると考えられた. 以上の結果から, NAAAはマクロファージで強く発現しているリソソーム酵素であること及び糖鎖付加と限定分解により成熟型になることが示され, 炎症や組織変性の際に増加するN-アシルエタノールアミンの分解に関与する可能性が示唆された. 〔論議〕福澤委員 細胞外から加えたN-アシルエタノールアミンが細胞内のリソゾームで加水分解されている知見は得られているか. 上田委員 NAAAを発現している生細胞をN-(14C)アシルエタノールアミンとインキュベートすると(14C)脂肪酸の遊離が観察される. 岡野副委員長 NAAAが肺胞および脳室内マクロファージで発現され, N-アシルエタノールアミンの分解に関与する生物学的意義についてお教え下さい. 上田委員 アナンダミドを含むN-アシルエタノールアミンは炎症局所や細胞変性部位で増加することが知られている. そのような場に集まったマクロファージが同物質を分解する際に本酵素が関与しているものと思われる. 玉井委員長 本酵素と疾患との関係は分かっているのでしょうか?上田委員 明らかな関係はわかっておりません. |
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ISSN: | 0006-386X 2424-080X |
DOI: | 10.20632/vso.82.5-6_353_1 |