オオムギや植物由来セリンラセマーゼは他の真核生物由来セリンラセマーゼと異なるグループを形成する : 遺伝子のクローニングと酵素化学的特性

アミノ酸にはL体とD体の鏡像異性体が存在するが, 生体を構成するアミノ酸はほとんどがL体であり, D-アミノ酸は細菌のペプチドグリカンなどの極めて限られた生体成分であると考えられてきた. 近年, D-セリンがほ乳類の脳のダリア細胞に存在しN-メチル-D-アスパラギン酸受容体のグリシン結合部位の内在性アゴニストであることや高塩濃度環境に曝露した無脊椎動物細胞でD-アラニンが多量に蓄積して浸透圧調節物質として機能していることが明らかにされ, 真核生物におけるD-アミノ酸の重要性に注目が集まっている. また, ほ乳類や無脊椎動物におけるD-アミノ酸生合成経路の解明が行われ, セリンラセマーゼやアラニ...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:ビタミン 2007/12/25, Vol.81(12), pp.619-620
Hauptverfasser: 藤谷, 典志, 堀内, 映実, 伊藤, 一敏, 杉本, 学
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:アミノ酸にはL体とD体の鏡像異性体が存在するが, 生体を構成するアミノ酸はほとんどがL体であり, D-アミノ酸は細菌のペプチドグリカンなどの極めて限られた生体成分であると考えられてきた. 近年, D-セリンがほ乳類の脳のダリア細胞に存在しN-メチル-D-アスパラギン酸受容体のグリシン結合部位の内在性アゴニストであることや高塩濃度環境に曝露した無脊椎動物細胞でD-アラニンが多量に蓄積して浸透圧調節物質として機能していることが明らかにされ, 真核生物におけるD-アミノ酸の重要性に注目が集まっている. また, ほ乳類や無脊椎動物におけるD-アミノ酸生合成経路の解明が行われ, セリンラセマーゼやアラニンラセマーゼの存在が明らかとなった. 一方, 植物にもD-アミノ酸が広く存在していることが報告されているが, その機能と代謝については不明である. そこで, 我々は世界に先駆けてシロイヌナズナ由来セリンラセマーゼ(AtSR)遺伝子をクローニングし発現させることに成功し, AtSRはほ乳類由来セリンラセマーゼと同様にPyridoxal 5'-phosphate(PLP)とCa2+やMg2+の共存下でラセマーゼ活性とデヒドラターゼ活性を示すが, ATP要求性が異なることを明らかにした1).
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.81.12_619