2. A環修飾14-epi-ビタミンD3と14-epi-19-ノルビタミンD3誘導体の合成と生物活性
ビタミンD3のもつトリエン構造は, 7-デヒドロコレステロールB環に対する光電子環状反応により生成するが, その後[1,7]シグマトロピー転位を介しプレビタミンD3⇔ビタミンD3の熱的平衡状態をとる. この化学平衡はビタミンD3のみならず, 25(OH)D3, 1α, 25(OH)2D3(1)へと代謝活性化されるそれぞれの過程で常に存在し, 1とそのプレ体(P1)の存在比は37℃で94:6と報告されている. P1には核内VDRを介する作用発現はほとんどなく, 膜VDRを介するnon-genomic作用をつかさどると考えられているが, その化学平衡の存在からP1を1の混入なしに純粋に単離すること...
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Veröffentlicht in: | ビタミン 2007, Vol.81 (11), p.582-583 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | ビタミンD3のもつトリエン構造は, 7-デヒドロコレステロールB環に対する光電子環状反応により生成するが, その後[1,7]シグマトロピー転位を介しプレビタミンD3⇔ビタミンD3の熱的平衡状態をとる. この化学平衡はビタミンD3のみならず, 25(OH)D3, 1α, 25(OH)2D3(1)へと代謝活性化されるそれぞれの過程で常に存在し, 1とそのプレ体(P1)の存在比は37℃で94:6と報告されている. P1には核内VDRを介する作用発現はほとんどなく, 膜VDRを介するnon-genomic作用をつかさどると考えられているが, その化学平衡の存在からP1を1の混入なしに純粋に単離することは0℃においても不可能であることから, 純粋なP1の生理活性測定は極めて困難と考えられる. CD環がcis配置の14-epi-1では平衡がプレ体(14-epi-P1)側に大きく偏るが, 本[1,7]シグマトロピー転位は天然型に比べ高い活性化エネルギーを要し, ベンゼン中80℃に加熱してそれらの存在比は5:95とされる. 単離した14-epi-P1の核内VDR結合親和性は1の0.5%であった. 我々は2位置換基を14-epi-P1に種々導入したところ, 2α-メチル体(2)で核内VDRに8.4%の結合親和性とHOS細胞での中庸なオステオカルシン転写活性を見出すことができた. 一方, ジエン構造の19-ノルビタミンD3にはプレ体が存在せず, その14-epi誘導体にはTX522のように低いカルシウム作用と高い乳がん細胞増殖抑制活性を有するものが報告されている. 我々は, 14-epi-19-ノル体のA環部を種々化学修飾し, 前立腺細胞増殖抑制活性, オステオカルシン転写活性, ラットOVXモデル投与実験, HL-60細胞分化誘導活性などを調べた. 化合物8には, 低濃度(0.1μg/kg)における骨作用とカルシウム作用の大幅な改善が認められた. 〔論議〕岡野客員 1)14-epi-19-ノル体の側鎖ハイブリッド体の合成, 生物活性についてご検討されていますでしょうか. 2)14-epi-19-ノル体でA環の安定型(pre体)が合成されたことより, これまでNormanらによって報告されている膜受容体との結合, non-genomic action等の生理作用の検討が可能となりますでしょうか. 橘高委員 1)まだD3側鎖のみです. 現在A環の化学修飾に集中しております. 今後側鎖を含めた, よりよいと考えられる化合物をデザインし, 合成研究を展開していきたいと考えております. 2)14-epi-プレビタミン誘導体のnon-genomicな活性について, NB4細胞を用いて詳細に検討していきたいと考えております. 加藤委員 合成されたビタミンDアナログにはアンタゴニスト活性を持つものは存在したでしょうか. 橘高委員 現在のプレ型ビタミンD誘導体で, VDRへの結合親和性が最高のもので天然ホルモンの8.4%にまで向上したところですが, お示ししたアゴニスト活性のみならず, アンタゴニスト活性についても今後評価していきたいと思います. 野口委員 化合物の構造のわずかなちがい(置換基のちがい)と活性の相関を調べる研究は非常に興味深いが, 細胞や, さらにvivo実験では期待どおりの作用がみられないことが往々にしておこる, 医学系の人から批判を受けることがあるが, 先生はどのように答えられますか. 橘高委員 今日, 低分子有機化合物の医薬品の開発成功率は1万分の1以下ですが, 構造活性相関研究なくしてはそれもかなわないわけですから, 吸収, 代謝などの体内動態が関わってくるvivoでの成果をフィードバックしていただいて議論の上, 化合物合成の研究を進めていく考えです. 吉村委員 in vitroでの活性から, in vivoの活性の予測が可能でしょうか. 橘高委員 ビタミンD誘導体合成で権威あるG.H.Posner教授(Johns Hopkins大学)をしても, 活性は評価してみないと分からない, というご意見ですが, 現在のところその域を出ないものと思います. 実験系によっては, in vitroデータからin vivo活性をかなりよく予測できる研究領域もあるようですが, in vitroのデータで切り捨てられた化合物に良好なvivo活性の可能性が本当にないのか, 効率だけで研究を進めることには割りきれない問題もあるのではないでしょうか. |
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ISSN: | 0006-386X |