妊娠マウスにおけるビオチン欠乏状態の尿中3-hydroxyisovaleric acid排泄への影響
水溶性ビタミンの1つであるビオチンは, 生体内でカルボキシラーゼの補酵素として炭酸固定反応に関与している. β-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼは, アミノ酸のひとつであるロイシンの代謝過程において必要な酵素である. このため, ビオチンが不足し, 酵素活性が低下すると, 尿中に有機酸である3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIA)が排泄されることが知られている. これまでの動物実験において, 妊娠中の母体のビオチン欠乏により, 胎児に発育遅延や形態異常が誘発されることが報告されている. また, 最近ヒトにおいて, 妊娠中に尿中の3-HIA排泄量が増加するという報告がある. しかしながら,...
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Zusammenfassung: | 水溶性ビタミンの1つであるビオチンは, 生体内でカルボキシラーゼの補酵素として炭酸固定反応に関与している. β-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼは, アミノ酸のひとつであるロイシンの代謝過程において必要な酵素である. このため, ビオチンが不足し, 酵素活性が低下すると, 尿中に有機酸である3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIA)が排泄されることが知られている. これまでの動物実験において, 妊娠中の母体のビオチン欠乏により, 胎児に発育遅延や形態異常が誘発されることが報告されている. また, 最近ヒトにおいて, 妊娠中に尿中の3-HIA排泄量が増加するという報告がある. しかしながら, 妊娠期間におけるビオチンと有機酸との関連については, ほとんど明らかにされていない. そこで, ビオチン欠乏妊娠マウスを用いて, 妊娠中の尿中ビオチン濃度と3-HIA濃度の変化を解析した. 8週齢のICR雌マウスを同系の雄マウスと早朝短期交配させ, 妊娠動物を得た. 受精栓確認日を妊娠0日とし, 妊娠動物を3群に分け, ビオチン欠乏飼料, 添加飼料, あるいは, 対照飼料(CE-2)を与えた.妊娠0, 4, 8, 12, 16日に24時間尿を採取した. 妊娠17日から絶食させ, 妊娠18日に解剖を行った. そこで, 母体の血清を採取し, 母体から取り出した胎児は, ブアン固定し, 外表の観察と体重測定を行った. ビオチンの測定は, 乳酸菌(L. plantarum ATCC 8014)を用いた微生物学的定量法に従い, 比濁法でおこなった. 3-HIAは, HPLC(有機酸分析システム)を用いて測定した. クレアチニンはJaffe法を用いたクレアチエン-テストワコーにより測定した. ビオチン欠乏群では, 母体の体重増加量, 胎児数および胎児重量が, 対照群および添加群と比較して低値を示した. しかし, 母体において, ビオチン欠乏による臨床的な影響はみられなかった. 母体の血清ビオチン量はビオチン欠乏群が有意に低値を示した. また, ビオチン添加群においても, 妊娠後期で尿中ビオチン量が有意に減少した. 尿中3-HIAは, ビオチン欠乏群で, 妊娠0日には32.9±17.3mmol/mol of creatinineであったが, 8日で260.8±116.7mmol/mol of creatinine, 妊娠後期の16日では488.5±91.8mmol/mol of creatinineに増加した(非妊娠では20.4±7.4mmol/mol of creatinine). 胎児では, 胎児数に変化はなかったが, 胎児体重は, ビオチン欠乏群において有意に低値を示した. 外表奇形は, ビオチン欠乏群において, 小顎症と口蓋裂の発症率は100%であり, 短肢症や短尾, 耳介低位も高率にみられた. 妊娠中の母体のビオチン欠乏状態は, 胎児の形態形成, とくに下顎, 口蓋の形成に影響を与えると考えられる. これまでの研究で, 非妊娠マウスにおいて, ビオチン欠乏4週目までで3-HIAの排泄がみられないという報告がある. 今回の実験結果では, 妊娠12日以降の妊娠後期に3-HIA濃度が増加し, 妊娠あるいは胎児発育によってビオチン欠乏状態の影響がより増強している. 妊娠後期にピルビン酸や乳酸の増加が見られたが, 妊娠の代謝や胎児発育との関連については検討が必要である. 妊娠後期に胎児が多量のビオチンを要求している可能性が考えられる. |
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ISSN: | 0006-386X |