2.セピアプテリン還元酵素ノックアウトマウスにおけるプテリジン代謝(第405回研究協議会研究発表要旨,ビタミンB研究委員会)

セピアプテリン還元酵素(SPR)は, テトラヒドロビオプテリン(BH4)生合成の第3段階を担う酵素であり, ピルボイルテトラヒドロブテリンの側鎖にある2つのカルボニル基を還元してBH4を合成する反応を触媒する. 近年, これまで見つかっていなかったヒトSPR欠損症が報告された[Bonafe L, et al.(2001)Am. J. Hum Genet, 69, 269-277]-本症例では, 肝臓でのBH4欠乏による高フェニルアラニン血症は起こらず, 脳内でのBH4欠乏によると考えられるモノアミン神経伝達物質の欠乏から発達障害やジストニアを呈した. 肝臓でBH4欠乏が起こらない理由は, SP...

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Veröffentlicht in:ビタミン 2006/09/25, Vol.80(9), pp.478
Hauptverfasser: 一瀬, 宏, 高澤, 千智, 藤本, 健吾, 加藤, 節子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:セピアプテリン還元酵素(SPR)は, テトラヒドロビオプテリン(BH4)生合成の第3段階を担う酵素であり, ピルボイルテトラヒドロブテリンの側鎖にある2つのカルボニル基を還元してBH4を合成する反応を触媒する. 近年, これまで見つかっていなかったヒトSPR欠損症が報告された[Bonafe L, et al.(2001)Am. J. Hum Genet, 69, 269-277]-本症例では, 肝臓でのBH4欠乏による高フェニルアラニン血症は起こらず, 脳内でのBH4欠乏によると考えられるモノアミン神経伝達物質の欠乏から発達障害やジストニアを呈した. 肝臓でBH4欠乏が起こらない理由は, SPRと同じファミリーに属する別のアルドケトレダクターゼがSPRの働きを補うためであると説明された. 今回我々は, SPRノックアウトマウスにおけるプテリジン代謝の変化について解析した. SPRノックアウトマウスはレキシコン社により作製されたものを用いた. 抗SPR抗体を用いたウエスタンブロッティングによりSPRタンパク質がホモ欠損マウスで消失していることを肝臓と脳で確認した. SPRヘテロ欠損マウスは外見上異常がなく, 正常に発育した. ホモ欠損マウスはほぼメンデル則に従って生まれてきたが, 生後の発達が悪く多くのマウスは4‐5週までに死亡した. 17日齢の肝臓や脳でBH4含量を調べてみたところ, ホモ欠損マウスの肝臓ではBH4量が野生型の10%以下に減少していた. それに対して, 脳ではホモ欠損マウスにおいても野生型の30%近い量が存在した. 脳内のモノアミンについても測定したところ, ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンはすべて野生型の約20%に減少していた. 臓器によるBH4残存量の差の原因は明らかでない. SPRの反応を触媒することのできる他の酵素の存在や, BH4再利用系に対する依存度の差など, いくつかの理由が考えられる. また, ヒトSPR欠損症とマウスSPRノックアウトマウスにおいても, 明らかな違いがあり, 何故このような違いが生まれるのか不明である, 今後さらにBH4代謝経路の解析を行い, BH4代謝の臓器差や種差の違いを解明していく必要がある. 〔論議〕中村客員 テトラビオプテリン(BH4)をこのノックアウトマウスに投与した場合, 生存させることはできますか. 一瀬委員 今回のSPRノックアウトマウスでは, まだ実験していません. しかし, PTPSノックアウトマウスではBH4を, 腹腔内投与または経口投与することにより, このマウスを生存させることができました. 栗山委員BH4を投与した場合, ネオプテリン濃度は低下しましたか, 神経症状発現にネオプテリン高値が影響しているのかどうかを知りたいのでお聞きしました. 一瀬委員 BH4の投与によって, ネオプテリン量は影響されていないと思います, 大川委員 このノックアウトマウスの致死の原因となるような臓器形成障害などありましたか. 一瀬委員 外見上わかるような明らかな臓器形成障害はありませんでした. 鏡山顧問 1)BH4合成経路の他の二つの段階の酵素欠損については, 本演題のようなヒトとマウスで異なる結果が得られるようなことはないでしょうか. 2)BH4合成経路については, マウスをヒトに変わるモデルとして用いるのは適当でないと考えてよいのでしょうか. 一瀬委員 1)PTPSノックアウトマウスでは, ヒトとマウスでのプテリジン代謝の差は報告されていません. 2)SPRノックアウトマウスでみられたように, マウスとヒトでBH4代謝が異なっている部分があると思われます.
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.80.9_478_1