8.ヒト尿中の水溶性ビタミン含量(第404回研究協議会研究発表要旨,ビタミンB研究委員会)

生涯にわたる高い健康を維持するためには, 管理栄養士から, 適宜に, 栄養教育と栄養指導を受けることが必要である. このための根本資料として, どれだけのエネルギーと栄養素を摂れば健康を維持できるのかという数値が記載されている「食事摂取基準」と, 食品に含まれるエネルギーと栄養素含量が記載されている「食品成分表」が利用されている. 栄養素の適正必要量は, ごくわずかな被験者集団を対象にして, 必要量と関係のある生体指標を利用して, 実験を行い, 求められた平均必要量を基に, 被験者集団が属する母集団全員の推定平均必要量が策定されている. つまり, 母集団のほとんどすべてのヒトは, エネルギーと...

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Veröffentlicht in:ビタミン 2006/07/25, Vol.80(7), pp.373-374
Hauptverfasser: 柴田, 克己, 廣瀬, 潤子, 福渡, 努
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:生涯にわたる高い健康を維持するためには, 管理栄養士から, 適宜に, 栄養教育と栄養指導を受けることが必要である. このための根本資料として, どれだけのエネルギーと栄養素を摂れば健康を維持できるのかという数値が記載されている「食事摂取基準」と, 食品に含まれるエネルギーと栄養素含量が記載されている「食品成分表」が利用されている. 栄養素の適正必要量は, ごくわずかな被験者集団を対象にして, 必要量と関係のある生体指標を利用して, 実験を行い, 求められた平均必要量を基に, 被験者集団が属する母集団全員の推定平均必要量が策定されている. つまり, 母集団のほとんどすべてのヒトは, エネルギーと栄養素の適正必要量はわからないのが現実である. この量を摂っていればあなたの必要量に達しているでしょう, という確率論的な値が食事摂取基準に示されている推奨量である. 食品成分表は, 食品中のエネルギーと栄養素を資源としてとらえている. 一方, 食事摂取基準に示されている数値は, 生体が利用可能なエネルギーと栄養素の数値である. すなわち, 「食品成分表」の数値と「食事摂取基準」に記載されている数値は意味が異なる. 水溶性ビタミンの食事摂取基準では, 「食品成分表」の数値と「食事摂取基準」の数値の乖離をうめるべき方便として, 「生体利用率(消化・吸収率と体内利用率を合わせた概念)」という概念を作った. 集団を指導する公衆栄養としては, 1日に食する代表的な食事中の水溶性ビタミンの生体利用率を明らかにすることは意義がある. しかし, 精度の高い個人単位の健康・栄養指導を行うには, 他の方法の開発が必要である. 個人のレベルでは, まず自分(生体)が習慣的に摂取しているビタミン量が適正であるか否かを知りたい. その目的のために, 介入試験を行い, 摂取量と尿中への排泄量との関係を調べた. その結果, いずれの水溶性ビタミンも摂取量と尿中への排泄量は高い相関を示した. この関係式を基に適正尿中排泄量の決定を試みた. そして, 健康・栄養指導の試み(ヘルスケア)として, 普通に生活をしているヒト尿中の水溶性ビタミン含量を測定し, 水溶性ビタミンの栄養評価を行ってみた. 〔論議〕安田会友 1)ビタミンB1, B2でも遊離型ビタミン以外に異化代謝産物の尿中排泄が知られているが, これらのことを考慮されていますか. 2)B群ビタミンの尿中排泄量は尿量の影響を受けるので, 水分摂取量を一定範囲内にする必要があると思いますが, いかがですか. 柴田委員 1)ビタミンB1とB2の異化代謝産物の量は測定していません. チアミンとリボフラビンだけです. 2)規定食を投与して, 水分摂取量のみを変化させた時に, B群ビタミン排泄量がどの程度影響を受けるのかに関する実験を行ったことはありません. また, 文献も, そのような観点から調べたことはありません. 検討します. 現時点では, 全くの経験的なことですが, 私どもが対象とする被験者(投薬を受けずに, 自立した日常生活を行っているヒト, 簡単にいえば, 大学に通学している学生)では, 尿量とB群ビタミン排泄量とは相関がないように思っていますが, 尿量とB群ビタミン排泄量との関係にも配慮して, 得られた数値の解析を行っていきます. 栗山委員 尿中のビタミン値を問題にするとき, 何か分母にする物質を測定し, 値をだすと, よりすっきりした値になると思います. 柴田委員分 母に何を持ってくるのかに関しては, 悩んでいます. 今のところ, 1日尿当たりで示すのが最も健康・栄養指標として精度が高いと思われます. クレアチニン当たりでは, 1日尿当たりよりも摂取量との相関関係は低くなります. 現在は1日尿を採取しないと評価できませんが, 随時尿で健康・栄養指標が評価できればと考え, ご指摘の指標を探しています. 田口委員 尿中に大量に排泄されているビタミンがいくつかあるヒトがいましたが, どのようなビタミン剤を飲んでいるかなど聞いた方がよいのではないでしょうか. また, このような実験をおこなう際にはビタミン剤は飲まないように指示した方が良いように思います. 柴田委員 説明がたりなかったようです. すみませんでした. ご質問をいただいた箇所は, 私どもが暫定的に提案した水溶性ビタミンの適正排泄量を利用した応用実験の一つです. 管理栄養士の方に健康・栄養指導の試みとして, 利用できないかという提案を行うためのデータです. そのため, 実験に協力していただく条件は, 「1日尿を集めてくださる方」のみにしました. したがいまして, ビタミン剤を飲まれている方もおられたようです. 佐伯客員 モデル系でのデーターでは, 尿中のレベルの低下がおこる間, 血中は変わらないということは, その間は臓器等でのレベルが下がるということを意味しているのではないでしょうか. そのように考えると, 各ビタミンごとでの動物レベルでの検討をする必要がないでしょうか. 過剰に投与した場合では欠乏にいたる過程はどうなるのでしょうか. 柴田委員 基本的な考え方を述べます. 投薬を受けずに, 習慣的に栄養素必要量を満たす食生活をしている健康人では, 水溶性ビタミンでも, ある程度肝臓に備蓄されていると考えています. このような方が, 私どもが考えるモデルの開始点であり, この開始点を維持(健康の維持)できるように健康・栄養指導を行うことが, 生活習慣病の予防法の一つになるものと考えています. しかし, ある事情により数日間, ビタミンの摂取量が必要量を下回ると, 尿中に排泄されるビタミン量がすばやく応答し, 低下してきます. 尿中にビタミンの排泄が検出される間は, 血液中の値は低下しません. ここまでを, 私どもは「健康」と考えています. なぜなら, 肝臓に備蓄されているビタミンを利用して他の組織に配分し, まだ体内全体でみれば余裕があるから
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.80.7_373