1.高等植物におけるアスコルビン酸生合成の制御(第115回会議研究発表要旨,ビタミンC研究委員会)

アスコルビン酸(AsA)は高等植物に普遍的かつ多量に含まれており,抗酸化能,細胞分裂・伸張の制御など多くの機能を有している.最近,植物のAsA生合成経路が明らかとなったが,植物体内でのAsAレベルの調節機構については殆ど不明である.そこでシロイヌナズナを用い,光などの生育条件がAsA量,AsA生合成酵素の発現レベルに及ぼす影響について検討した.また,生合成経路の鍵酵素の1つであるL-ガラクトース脱水素酵素(L-GalDH)の分子特性を明らかにし,細胞内AsAレベルの調節について検討した.MS培地上で栽培したシロイヌナズナを暗黒下へ移行させるとAsA量は顕著に低下した.この時,AsA生合成酵素の...

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Veröffentlicht in:ビタミン 2006/03/25, Vol.80(3), pp.163
Hauptverfasser: 薮田, 行哲, 三枝, 尚洋, 石川, 孝博, 重岡, 成
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:アスコルビン酸(AsA)は高等植物に普遍的かつ多量に含まれており,抗酸化能,細胞分裂・伸張の制御など多くの機能を有している.最近,植物のAsA生合成経路が明らかとなったが,植物体内でのAsAレベルの調節機構については殆ど不明である.そこでシロイヌナズナを用い,光などの生育条件がAsA量,AsA生合成酵素の発現レベルに及ぼす影響について検討した.また,生合成経路の鍵酵素の1つであるL-ガラクトース脱水素酵素(L-GalDH)の分子特性を明らかにし,細胞内AsAレベルの調節について検討した.MS培地上で栽培したシロイヌナズナを暗黒下へ移行させるとAsA量は顕著に低下した.この時,AsA生合成酵素の転写レベルの低下は認められなかった.また,ショ糖を含まないMS培地上で暗黒下に置いた植物に,再度光照射を行うとAsA量の回復が認められた.このとき,AsA生合成酵素の著しい誘導は認められなかった.次に,ホウレンソウよりL-GalDHの精製,cDNAの単離により分子特性について解析した.その結果,本酵素活性はAsAにより拮抗阻害を受け,そのKi値は133.2±7.2μMであった.以上より,AsA量の調節に光および糖が関与していること,またL-GalDHのAsAによるフィードバック阻害を含めた種々の機構により制御されていることが示唆された.〔論議〕小城勝相氏 L-GalDHはASC130MMで阻害されるとのことですが,植物細胞の中でASCはどの程度の濃度存在するのか? Znによる阻害というのもめずらしい現象ですが細胞内にどの程度存在するのでしょうか.またどのような阻害機構を考えておられるのか.薮田行哲氏 葉緑体には数100mM~数10mM存在し,細胞質には数10mM~数10μM程度のASCが存在します.よって,L-GalDHのフィードバック阻害により細胞内ASCは厳密に制御されていると考えられます.細胞内のZnはほとんどがタンパク質と結合していると考えられますが,濃度については不明です.阻害機構についてはSH基の酸化が関与しているのではないかと考えております.吉田昭顧問 五訂成分表ではほうれんそうのAsA合量は標準的には35mg/100gとなっていますが,夏は20~25mg(?)冬は60mgと記載されています.このような冬と夏の相異に代謝的にはどのような変化によると考えればよいのでしょうか.薮田行哲氏 植物のAsA量の制御は光合成産物の量に制御されていると考えられています.冬と夏でのAsA量の違いは,ホウレンソウは比較的低い生育温度を好むことから,夏に比べ冬の方が高い光合成能を持っているためであると考えられます,倉田忠男委員 植物でのAsAの一般的な分解機構については,現在どの程度わかっているのか,薮田行哲氏 AsAの分解は化学的に起こっていると考えられていますが,ほとんど不明です.
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.80.3_163_1