15.超好熱始原菌Thermococcus litoralis DAM5473の新規低基質特異性アミノトランスフェラーゼ : クローニングと基礎的性質(第403回ビタミンB研究協議会研究発表要旨,ビタミンB研究委員会)

超好熱始原菌は超好熱性という生育条件と始原菌という微生物学的特性の双方から一般の細菌とは大きく違った酵素系を持ち,特徴的な酵素を生産している.Thermococcus litoralis DAM5473のアミノトランスフェラーゼに関しても,1994年,M.W.Adamsらが超耐熱性の芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼを研究し,2004年には大島らは同様な新規酵素,アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの性質と構造を報告している.われわれは本菌に基質特異性の低い新しいアミノトランスフェラーゼの存在を認め,単離精製した.本研究では本酵素遺伝子のクローングと基本的な性質をあつかっている...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:ビタミン 2006/03/25, Vol.80(3), pp.152-153
Hauptverfasser: 左右田, 健次, 内田, 悠喜, 老川, 典夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:超好熱始原菌は超好熱性という生育条件と始原菌という微生物学的特性の双方から一般の細菌とは大きく違った酵素系を持ち,特徴的な酵素を生産している.Thermococcus litoralis DAM5473のアミノトランスフェラーゼに関しても,1994年,M.W.Adamsらが超耐熱性の芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼを研究し,2004年には大島らは同様な新規酵素,アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの性質と構造を報告している.われわれは本菌に基質特異性の低い新しいアミノトランスフェラーゼの存在を認め,単離精製した.本研究では本酵素遺伝子のクローングと基本的な性質をあつかっている.【方法】本菌は85℃,pH6で18時間培養した.形質転換したEscherichia coli Rosetta(DE3)はアンピシリン,クロラムフェニコール含有LB培地で37℃,24時間培養した.本酵素は超音波破砕細胞抽出液から熱処理とクロマトグラフィーにより均一状態に生成した.活性はアラニン,2-オキソグルタル酸を基質として90℃で反応後,生成するピルビン酸をサリシルアルデヒド法により定量して測定した.各種アミノ酸と2-オキソグルタル酸の間のアミノ基転移反応では,生成するグルタミン酸をグルタミン酸オキシダーゼにより定量して活性測定を行った.【結果と考察】本酵素は分子量が45,000で,α2構造をもち,417アミノ酸残基から構成される.その一次構造を調べると,一次構造の相同性に基づくアミノトランスフェラーゼのサブグループI-IVのいずれにも属さない,Thermococcus litoralisのアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼに相同性をしめす.アミノ基供与体としては,α-ケトグルタル酸に対してロイシン,フェニルアラニン,メチオニン,バリン,イソロイシンなど,疎水性アミノ酸が高い反応性をしめす.一方,アラニンに対してα-ケトイソカプロン酸,α-ケトイソ吉草酸とα-ケトグルタル酸が良好なアミノ基受容体である.このように低基質特異性と一次構造の面から本酵素は,他のアミノトランスフェラーゼとかなり相違している.同じ菌の生産する耐熱性アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼとは一次構造が類似しているものの,基質特異性の面では大きく異なる.最適温度は90℃以上で,高い耐熱性を示す.〔論議〕澤委員 1)基質特異性として,分岐鎖,芳香族アミノ酸に高い反応性を示していますが,GOT,GPTは本菌には存在するのでしょうか,2)低基質特異性と生育温度には相関性があるとお考えでしょうか.左右田顧問 1)私たちがスクリーニングした結果では,Asp AT(GOT)活性は認められませんでした.AlaATは存在します.2)現在得られている知見では,超好熱始原菌に低基質アミノトランスフェラーゼが集中して存在します.生命誕生初期に出てきた超好熱始原菌に,このような低基質アミノトランスフェラーゼが存在し,分子進化の過程で専門家されたアミノトランスフェラーゼが作られていったと想像されます.ただし,アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼのように基質特異性の高いアミノトランスフェラーゼも超好熱始原菌により生産されています.稲垣準委員 この酵素は低基質特異性が特徴ですが,立体構造の予測モデルからは,基質特異性が低い理由が,何か説明できないでしょうか 左右田顧問 現在のところ,推定立体構造からは,基質特異性の低い点を解明する手掛かりは得られていません.
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.80.3_152