フラビン酵素における反応制御の構造的基盤(シンポジウム1.「B群ビタミンはどのように働くか」)

ビタミンB2を基本とするフラビン補酵素(FAD, FMN)は, 酵素タンパク質と結合した状態でフラビン酵素の触媒反応を担っている. 生体中には, 数多くのフラビン酵素が存在し, それぞれが, 生命活動に重要な役割を果たしている. フラビン酵素の触媒反応は基本的には酸化還元反応であるが, その基質, 反応の種類は極めて多様である. したがって, フラビン補酵素には, 多様な反応に対応できる補酵素としては理想的な潜在能力が備わっている. しかし, フラビン補酵素は固有のタンパク質に結合することによって, その多様な潜在能力からそれぞれのフラビン酵素のもつ特異性が選別され, 固有の基質に対して固有の反応を触媒する触媒活性が発現される. 本講演では, 最近演者らのところで三次構造が解明されたD-アミノ酸オキシダーゼ, アシルCoAオキシダーゼについて, フラビン補酵素の酸素に対する反応がどのように制御されるか, すなわちフラビンのもつ潜在能力がどのように選別されるか, その構造的な裏づけを概説する. D-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)は, FADを補酵素とする典型的なフラビン依存性オキシダーゼである.