アスコルビン酸の遺伝子発現調節作用

アスコルビン酸(AsA)は抗壊血病因子として発見されて以来, 様々な生理作用を持つ多機能ビタミンとして, その作用機作や医学的, あるいは機能性食品としての利用に関する多様な研究が行われてきた. しかし, AsAの作用は化学的な側面から主として解析され, 細胞機能, 特に遺伝子発現制御にかかわる解析は立ち遅れている1). 本稿ではAsAの遺伝子発現調節作用に関する最近の知見を紹介する. 1. AsAによる遣伝子発現の変動 AsAはその化学的性質により特異的な生化学的環境を作ることで細胞機能に影響を及ぼし, 直接あるいは間接的に遺伝子の発現に影響する例が幾つか報告されている. AsAからのシグナ...

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Veröffentlicht in:ビタミン 1997/08/25, Vol.71(8), pp.402-404
Hauptverfasser: 水谷, 昭文, 鳥居, 恭好, 塚越, 規弘
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:アスコルビン酸(AsA)は抗壊血病因子として発見されて以来, 様々な生理作用を持つ多機能ビタミンとして, その作用機作や医学的, あるいは機能性食品としての利用に関する多様な研究が行われてきた. しかし, AsAの作用は化学的な側面から主として解析され, 細胞機能, 特に遺伝子発現制御にかかわる解析は立ち遅れている1). 本稿ではAsAの遺伝子発現調節作用に関する最近の知見を紹介する. 1. AsAによる遣伝子発現の変動 AsAはその化学的性質により特異的な生化学的環境を作ることで細胞機能に影響を及ぼし, 直接あるいは間接的に遺伝子の発現に影響する例が幾つか報告されている. AsAからのシグナル伝達の機構として提唱されている主要な説を二つ紹介する. 1)膜脂質過酸化を介する機構:Chojkierらは繊維芽細胞に発現するI型コラーゲンmRNAレベルがAsA添加により上昇することを報告している. 彼等はこの現象を解析した結果, AsAと硫酸鉄の共存下で細胞膜脂質が過酸化されmalondialdehyde(MDA)が生成し, MDAが転写調節因子c-mybの転写を上昇させることでコラーゲン遺伝子発現に影響を及ぼすと結論付けている2).
ISSN:0006-386X
2424-080X
DOI:10.20632/vso.71.8_402