Lactobacillus pastorianus類の生化学的研究 : (II)B1号菌とLactobacillus heterochiochiiの差異ならびにB1号菌における炭酸ガスの摂取, 同化によるメバロン酸様物質生成現象

第1報における一般的菌学性質のみより観察すればB1号菌は新菌種ではなくL. heterohiochiiのビール適応菌株であるという見方もある. この点を解明するために北原教授よりL. heterohiochii 4菌株を譲り受けB1号菌と生理学的性質を比較した. その結果両菌は明らかに異種菌であるという結論に到達した. この研究過程においてB1号菌は炭酸ガスを摂取, 同化してメバロン酸様物質を合成し, これによつて解糖作用が促進されることを認めた. 最近ロイシンを前駆物質とし炭酸固定を経てメバロン酸が生合成される径路が明らかにされた. したがつてB1号菌におけるメバロン酸様物質の生合成もこれに類似した機序を経て行なわれるものと思われる. ちなみにメバロン酸が関与する酵素系によつて醗酵が促進されるばあいは果糖の醗酵力がもつとも強力であるのにたいしメバロン酸様物質が関与する酵素系によるばあいは果糖醗酵能は認められない.