中国吉林省延辺朝鮮族自治州の朝鮮族の食生活－延吉市内朝鮮族と漢族の食事状況

現代中国の朝鮮族は19世紀の半ばから1940年代にかけて生活苦のために朝鮮半島から中国東北地方に移住してきた民族であり, 主に遼寧省, 吉林省, 黒龍江省の3省に分布している1, 2). その人口は192万人(1990年第4回人口調査)であり, 中国に居住する55の少数民族の中では13番目に多い民族に位置づけられている. 中国朝鮮族は100余年もの間, 漢族や満族などの東北部に居住するその他の民族とともに, 土地を開拓しながら, 自民族の言語, 文化, 風俗習慣などを継承してきた. 食生活についても, 最大人口を占める東北部の漢族とは異なり, 中国朝鮮族はキムチ, コチュジャン, テンザンクッ(味噌汁)などの伝統食をはじめとしてさまざまな食文化の特色をもつことが報告されている3～6). 吉林省延辺朝鮮族自治州は吉林省の東部に位置し, 朝鮮民主主義人民共和国に隣接している(図1). 人口は中国全朝鮮族の43.7%にあたる83.9万人が生活している中国最大の朝鮮族居住地区であり7), 当自治州の民族別人口比率は漢族58.5%, 朝鮮族38.6%, その他の民族2.9%である. この地区では幼稚園から大学までの朝鮮学校があり, 幼児期から一貫して民族教育が受けられることも独自の文化を継承することに寄与している.