フラクトオリゴ糖の配合が麦芽飲料中カルシウムの吸収に及ぼす影響と長期飲用時の安全性に関する検討

カルシウムの摂取不足は, 長期臥床に至る主要原因のひとつである骨粗鬆症の一因となる. 世界でも稀に見るスピードで高齢化社会が進行する我が国においては, 骨粗鬆症の有効な予防治療法の確立が急務となっているが, 骨粗鬆症は, 十分なカルシウムの摂取や適度な運動といった生活習慣の改善によって, ある程度予防することが可能な疾患であることが, 多くの研究により明らかにされている1~5). それにもかかわらず, 近年の国民栄養調査でも明らかとされている通り, 国民のカルシウムの摂取は未だ十分とはいえない状況にある6). さらに最近, カルシウムはその摂取量だけが問題なのではなく, 吸収率が高いことも重要...

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Veröffentlicht in:栄養学雑誌 2002-02, Vol.60 (1), p.11-18
Hauptverfasser: 上西一弘, 太田篤胤, 福島洋一, 香川靖雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:カルシウムの摂取不足は, 長期臥床に至る主要原因のひとつである骨粗鬆症の一因となる. 世界でも稀に見るスピードで高齢化社会が進行する我が国においては, 骨粗鬆症の有効な予防治療法の確立が急務となっているが, 骨粗鬆症は, 十分なカルシウムの摂取や適度な運動といった生活習慣の改善によって, ある程度予防することが可能な疾患であることが, 多くの研究により明らかにされている1~5). それにもかかわらず, 近年の国民栄養調査でも明らかとされている通り, 国民のカルシウムの摂取は未だ十分とはいえない状況にある6). さらに最近, カルシウムはその摂取量だけが問題なのではなく, 吸収率が高いことも重要であることが明らかにされた7). このような背景から, 摂取したカルシウムの生体利用性をいかに高めるかは重要な研究課題であり, 数多くの研究が進められてきた. 現在, カルシウムの吸収を高める作用が確認され, 特定保健用食品8)として実用に至っている食品成分には, 難消化性少糖であるフラクトオリゴ糖(FOS), 乳たんぱく分解物であるカゼインフォスフォペプチド(CPP), 有機酸とカルシウムを組み合わせたクエン酸マレイン酸カルシウム(CCM)の3種類がある. 食品成分の有用な生理機能を特定保健用食品として実用化するためには, その有効性をヒトで検証する必要がある. FOSについては, 出納試験法9)と安定同位元素カルシウム二重標識法10)を用いた二種類の実験によって, またCPP11)とCC12, 13)については放射性カルシウムあるいは安定同位元素カルシウム二重標識法を用いた実験によってそれぞれの有効性が確認されている. しかし, これらの実験は全て海外で実施されたものであり, 我が国においては, これまでに同位元素を用いた実験が行われていなかった. また, 食品の種類によっては, 例えばフィチン酸14), リン酸15)あるいはある種の食物繊維16)などのようにカルシウムの吸収を阻害する成分を含んでいる場合もあり, カルシウムの吸収を促進する食品成分の作用がこれらの阻害作用を上回って発現するかどうかについて, 望ましくは食品毎に確認されるべきであろう. 著者らは, カルシウム制限下でカルシウムと生理機能を有する食品成分(FOS)を摂取させ, その後の尿中カルシウム排泄量の増加から, 食品成分のカルシウム吸収促進作用を検証する方法を試み, 尿中骨吸収マーカーの測定を組み合わせることで, 評価可能であることを示したが17), 尿中に排泄されたカルシウムが摂取したカルシウムに由来しているという直接的な証拠は無く, 検討課題として残されていた. 本研究では, これらの課題を解消するため, カルシウムの安定同位元素(44Ca)を添加した対照飲料ないしFOS配合試験飲料を被験者に摂取させ, 尿中44Ca/43Ca比の上昇を観察することによりカルシウムの吸収性における試験飲料の対照飲料に対する相対的優位性を検証した. また, 試験飲料の長期摂取における安全性を確認するため, 13週間にわたる長期摂取安全性試験を実施した.
ISSN:0021-5147
DOI:10.5264/eiyogakuzashi.60.11