食生活とがん

約20年前, ヒトのがんの原因として, 大きなウエイトを占めるものは食事であると報告されていた. 日本では1981(昭和56)年以来, がんが死亡率の第1位を占めているが, 臓器別のがん種で比較すると, その間に少々の変動が認められる. 例えば, 胃がんが減少し, 肺がんが1996年以降増加し始めている. がん研究振興財団が発表した「がんの統計」1)によると, 2015年には日本人のがん罹患は, 男性の場合, 肺がんが最も多く, 胃, 肝, 大腸, 前立腺と続き, 女性の場合は, 大腸がんが最も多く, 乳腺, 肺, 胃の順位になると推測されている. これらの順位は欧米に準ずるというわけであるが...

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Veröffentlicht in:栄養学雑誌 1998-06, Vol.56 (3), p.121-127
Hauptverfasser: 今井一枝, 藤木博太
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:約20年前, ヒトのがんの原因として, 大きなウエイトを占めるものは食事であると報告されていた. 日本では1981(昭和56)年以来, がんが死亡率の第1位を占めているが, 臓器別のがん種で比較すると, その間に少々の変動が認められる. 例えば, 胃がんが減少し, 肺がんが1996年以降増加し始めている. がん研究振興財団が発表した「がんの統計」1)によると, 2015年には日本人のがん罹患は, 男性の場合, 肺がんが最も多く, 胃, 肝, 大腸, 前立腺と続き, 女性の場合は, 大腸がんが最も多く, 乳腺, 肺, 胃の順位になると推測されている. これらの順位は欧米に準ずるというわけであるが, その原因は食生活の中でも食事の欧米化, 特に, 高脂肪低残渣食によると考えられている. 食事の中から, がんの原因を見出す試みは少なからずなされてきたが, ヒトのがんの発生が, 多くの遺伝子変化の蓄積を伴う, いわゆる, 多段階発がんというプロセスをとる限り, がんの原因は単一ではない. 従って, がんの原因を感染症のように単一の因子によると考えるのには無理がある. 一方, 食事の中に含まれる成分が発がんを抑制するという考えは広く受け入れられてきた. 最近特に, がんの化学予防の概念が導入されてきて, 食事は発がんを抑制する物質を含むものとして見直されている. しかし, 動物実験で発がんを抑制する物質が様々な食事の素材の中から見出されても, その化合物はいろいろ違ったpHをもつヒトの消化管の中で, どの程度の有効濃度でどのような反応様式の下に作用しているのか, あるいは, その化合物はどのような臓器に吸収され, 細胞内でどのように反応しているか等, 薬物代謝の面から追求はなされていない. しかし, 緑茶によるがん予防は世界中の研究者が関心をもって追求し, ヒトでの疫学データも示されている. 緑茶の飲用によりヒトのがんが予防できることを本稿の要点として進めることにする.
ISSN:0021-5147