19.シベレスタットナトリウム水和物が有効と考えられたARDSの9ケ月女児例

近年, 成人ARDSにおいて好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウム水和物(以下シベレスタット)の有用性が報告されているが, 小児での使用報告例は少ない. 今回私どもは, シベレスタットが効果的であった9ヶ月のARDS症例を経験したので報告した. 【症例】9ヶ月, 女児. H17.2/11, 母親が患児を布団に投げつけた後, 児が動かなくなり救急隊を要請した. 当院搬送時, JCS200, 血圧78/47mmHgで, 眼球上転し, 呼吸音は両側で減弱していた. 動脈血液ガス分析では(O2 10L/min Mask&bag下), pH7.069, PaO2 400.0mmHg, PaCO2 26.8mmHg, HCO3-7.6mmol/l, BE-21.2mmol/lと代謝性アシドーシスを認めた. 頭部CT上外傷性くも膜下出血を認め, 搬送後, 痙攣が持続したため人工呼吸管理を開始し, 2時間後からSpO2が急速に低下した. 5時間後, P/F比70となり胸部単純レントゲン写真(以下XP)上, 肺野に均等状陰影と気胸を認め, 心エコー上左心不全所見を認めず, 外傷性くも膜下出血及びショックによるARDSと診断し, 呼吸循環管理を行った. 更にP/F比は40まで低下したため発症10時間後にシベレスタット(4.8mg/kg/day)を開始した. 投与4時間後よりP/F比は200以上となり, 2日後にはP/F比400以上を維持した. 胸部CT, XP所見も改善したため4日目に投与中止し, ARDS発症8日目に抜管した, 【まとめ】シベレスタット投与が効果的で, 副作用を認めず安全に使用出来た9ヶ月ARDS例を経験した. 小児ARDSにおけるシベレスタットの適応, 開始時期, 量などについて更に検討していきたいと考えている.