多系統萎縮症に対する医師主導治験

多系統萎縮症(multiple system atrophy : MSA)は, 平均発症年齢は57歳で, 自律神経症状に加えて, 小脳性運動失調, パーキンソン症状がさまざまな組み合わせで出現する神経変性疾患である. その臨床経過は進行性であり, 有効な治療法は確立されていない. MSAは, 大部分孤発性疾患であるが, 稀に観察される多発家系の分子遺伝学的解析から, COQ2遺伝子にホモ接合あるいは複合ヘテロ接合変異を有する家系を見出し, COQ2遺伝子が, MSA多発家系の病因遺伝子の一つであることを見出した. さらに, 孤発性MSA症例においても, 機能障害性のCOQ2遺伝子のヘテロ接合性...

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Veröffentlicht in:神経治療学 2020, Vol.37(3), pp.368-368
Hauptverfasser: 辻, 省次, 三井, 純
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:多系統萎縮症(multiple system atrophy : MSA)は, 平均発症年齢は57歳で, 自律神経症状に加えて, 小脳性運動失調, パーキンソン症状がさまざまな組み合わせで出現する神経変性疾患である. その臨床経過は進行性であり, 有効な治療法は確立されていない. MSAは, 大部分孤発性疾患であるが, 稀に観察される多発家系の分子遺伝学的解析から, COQ2遺伝子にホモ接合あるいは複合ヘテロ接合変異を有する家系を見出し, COQ2遺伝子が, MSA多発家系の病因遺伝子の一つであることを見出した. さらに, 孤発性MSA症例においても, 機能障害性のCOQ2遺伝子のヘテロ接合性変異がMSAの発症のリスクを高めることを見出した. 比較的頻度の高いV393Aは, 日本だけでなく, 中国, 台湾においても, 孤発性多系統萎縮症の発症リスクを高めることが, メタ解析により確認されてきており, 東アジアにおいて, COQ2 V393A変異が, MSAの遺伝的リスクファクターであることが確立されてきている. COQ2遺伝子は, コエンザイムQ10合成系の酵素をコードしており, COQ2変異により, コエンザイムQ10の低下を来たすことが, MSAの病態機序に関与していると考えられる. さらに, COQ2変異を有していない症例においても, 血漿, 脳脊髄液, 小脳でコエンザイムQ10の低下が見出されており, コエンザイムQ10の低下がMSAの病態機序に密接に関連していると考えられている. 以上のことから, 高用量のコエンザイムQ10の投与が, MSAの病態機序の緩和に有効である可能性が示されており, その有効性を検討することとした. これまでに, 高用量コエンザイムQ10投与について, 第1相試験を実施し, 安全性, 薬物動態についての基礎データを得て, 第II相医師主導治験(UMIN000031771)に進んでいる. 試験のデザインは, COQ2遺伝子変異の有無による層別化を行い, 投与期間は48週として, プラセボを対照としたランダム化比較試験である. 主要評価項目は, UMSARS-II subscoreを設定した. 本治験では, 遺伝子変異の有無を層別化因子とすることから, MSAレジストリを立ち上げ, 本レジストリより治験へのリクルートを行うこととした. その結果, 目標とした症例数(120例)の登録を完了し, 治験を継続している.
ISSN:0916-8443
2189-7824
DOI:10.15082/jsnt.37.3_368