楔状欠損を有する歯牙における唇側辺縁歯肉のレベルに関する考察
本報告は,不適切なブラッシングにより生じた辺縁歯肉の退縮を,歯周外科手術を行なうことなくブラッシング方法を改善することにより生理的に許容される位置までクリーピングさせ治療した症例である。患者は26歳女性で,右下臼歯部の冷水痛を主訴に来院した。歯周組織検査の結果,主訴部の齲蝕と共に13,14,23の唇側辺縁歯肉に著しい退縮とフェストゥーン様のロール状肥厚が認められた。咬合様式はグループファンクションで13,23に過干渉は認められなかったため,唇側辺縁歯肉退縮の原因は咬合ではなく不適切なブラッシングによると判断した。日本歯周病学会による歯周病分類システムに準じ,上顎前歯部唇側辺縁歯肉の退縮を伴う広...
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Veröffentlicht in: | 日本歯周病学会会誌 2016/03/28, Vol.58(1), pp.41-49 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 本報告は,不適切なブラッシングにより生じた辺縁歯肉の退縮を,歯周外科手術を行なうことなくブラッシング方法を改善することにより生理的に許容される位置までクリーピングさせ治療した症例である。患者は26歳女性で,右下臼歯部の冷水痛を主訴に来院した。歯周組織検査の結果,主訴部の齲蝕と共に13,14,23の唇側辺縁歯肉に著しい退縮とフェストゥーン様のロール状肥厚が認められた。咬合様式はグループファンクションで13,23に過干渉は認められなかったため,唇側辺縁歯肉退縮の原因は咬合ではなく不適切なブラッシングによると判断した。日本歯周病学会による歯周病分類システムに準じ,上顎前歯部唇側辺縁歯肉の退縮を伴う広汎型軽度慢性歯周炎と診断した。適切なブラッシング方法を習得すれば歯肉のクリーピングが期待出来ると考え,歯周外科手術を行なわず,ブラッシング方法改善を目的とした指導に重点を置いた。指導したブラッシング方法が定着するまでは短い間隔で通院してもらい,残留したプラークは辺縁歯肉を傷つけないよう注意深く術者が除去した。正しいブラッシング方法の定着と共に通院間隔を徐々に延ばしていった。初診から15年後,歯肉は楔状欠損の手前までクリーピングした。その後も同様のブラッシングを継続した結果,18年後には楔状欠損を覆う位置までクリーピングしたことで歯肉縁下のプラークコントロールが不良になり,唇側辺縁歯肉に炎症が認められるようになった。そこで,歯ブラシの毛先をやや根尖方向に向けてブラッシングするようにし,楔状欠損が露出する位置まで辺縁歯肉を退縮させた。プラークが除去しやすくなったことで,唇側辺縁歯肉の炎症は改善し,25年後の現在良好に経過している。口腔内をよく観察し,正しい診断の元に適切な処置を行なえば,歯肉弁歯冠側移動術や結合組織移植術などの歯周外科手術に頼らなくても,ブラッシング方法を改善することで歯肉はクリーピングし退縮した辺縁歯肉を生理的に許容される位置まで回復させることが出来る。適切なブラッシング方法の習得を目的とした患者指導は,歯科衛生士の重要な役割と考えられる。 |
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ISSN: | 0385-0110 1880-408X |
DOI: | 10.2329/perio.58.41 |