学童期の口唇閉鎖不全には鼻閉塞の関与は少ない

【目的】近年, 安静時に口を閉じていない子供のことが社会的な問題として取り上げられている. このような口唇閉鎖不全は, 口呼吸の一徴候として100年以上前から注目されてきた. 口呼吸は口腔内において, 歯肉の炎症, 舌苔の付着, 口臭の原因になるとされている. また, 顎顔面歯列形態に影響を及ぼすという考えもあり, 歯周病学的, 矯正学的リスクファクターのひとつに挙げられている. 口呼吸の原因については, 一般的に, 鼻腔もしくは口腔の異常によるものが大半を占めており, 鼻腔の異常として鼻閉塞を引き起こすすべての疾患や異常, 口腔の異常として上顎前突や開咬, 歯列不正による口唇閉鎖不全があると...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 2003, Vol.45 (suppl-1), p.148-148
Hauptverfasser: 中島左代里, 内藤徹, 日高理智, 横田誠
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【目的】近年, 安静時に口を閉じていない子供のことが社会的な問題として取り上げられている. このような口唇閉鎖不全は, 口呼吸の一徴候として100年以上前から注目されてきた. 口呼吸は口腔内において, 歯肉の炎症, 舌苔の付着, 口臭の原因になるとされている. また, 顎顔面歯列形態に影響を及ぼすという考えもあり, 歯周病学的, 矯正学的リスクファクターのひとつに挙げられている. 口呼吸の原因については, 一般的に, 鼻腔もしくは口腔の異常によるものが大半を占めており, 鼻腔の異常として鼻閉塞を引き起こすすべての疾患や異常, 口腔の異常として上顎前突や開咬, 歯列不正による口唇閉鎖不全があると考えられている. しかし, 実際, 鼻閉塞や歯列不正がどの程度口呼吸, もしくは口唇閉鎖不全に関わっているかを調査した研究は少ない. 今回, 我々は学童を対象に行った調査の結果を用いて, 口唇閉鎖不全発生に鼻腔の異常, 口腔の異常がどの程度関わっているかについて検討した. 【対象および方法】北九州市内の小学生500名を対象として, 2002年11, 12月, 2003年1月に調査を実施した. 調査項目は, ウ蝕, 歯周病関連の診査項目に加え, 口唇閉鎖状態, 鼻閉塞の有無, 上口唇の翻転, 上顎前突の有無, 開咬の有無, 口臭関連パラメーターとした. 口唇閉鎖状態の判定は, 検査待機中の学童を検査者が観察して行った. 鼻閉塞の有無は鼻息計測により判定した. 上口唇の翻転は視診にて判定した. 上顎前突はオーバージェットが8mm以上のものとした. 開咬は上下前歯切縁間の垂直的距離が6mm以上のものとした. 調査は熟練した2名の歯科医師によって行われた. 解析手法は, 記述統計の検討の後, 口唇閉鎖不全発生を目的変数, 口唇閉鎖不全の原因となり得る変数を説明変数として, ロジスティック回帰分析を行った. 【結果】口唇閉鎖不全を呈する学童は, 62.1%(301/485)であった. ロジスティック回帰分析の結果, 危険率5%以下の水準で有意性が認められた変数は, 上口唇の翻転, 上顎前突, 性別の3変数であり, オッズ比はそれぞれ上口唇の翻転2.87(p=0.002), 上顎前突2.02(p=0.048), 女性0.60(p=0.009)で男性に口唇閉鎖が多いことが示された. また, 従来, 口唇閉鎖に大きく関与すると思われていた鼻閉塞は有意な寄与因子とはならなかった(オッズ比2.40, p=0.088). 【考察および結論】今回の分析では, 口唇閉鎖不全の発生に影響を与えているのは, 上口唇の翻転, 上顎前突, 性別であり, 口唇閉鎖に強い影響を与えていると思われる鼻閉塞は有意ではなく, この集団での口唇閉鎖に対する関わりはあまり高くないことがうかがわれた. 歯周病学的, 矯正学的リスクファクターである口呼吸への対処を考える場合, その一徴候である口唇閉鎖不全に関して, 学童期においては, 鼻閉塞以外の原因に注目する必要があることが示唆された.
ISSN:0385-0110