歯肉由来線維芽細胞におけるPGE2産生におよぼすPDGFの役割

【目的】血小板由来成長因子(PDGF)は, 血小板が牛成する間葉系細胞に対する増殖活性を持つ因子として報告されたが, 最近では様々な細胞から産生分泌されることがわかり, 細胞分化, 細胞内マトリックス産生など多様な生理活性作用が明らかにされている. 我々はこれまでヒト歯肉由来線維芽細胞におけるPDGFの効果について検討を行い, 細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を介してアラキドン酸遊離を起すことを報告している. 本研究では歯肉線維芽細胞におけるプロスタグランジンE2(PGE2)産生に対するPDGFの役割について検討を行った. 【材料および方法】1. 歯肉由来線維芽細胞は, 臨床的に健康な歯周組織...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 2003-09, Vol.45 (suppl-1), p.135-135
Hauptverfasser: 中尾寿美, 小方頼昌, 古山俊介, 杉谷博士
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】血小板由来成長因子(PDGF)は, 血小板が牛成する間葉系細胞に対する増殖活性を持つ因子として報告されたが, 最近では様々な細胞から産生分泌されることがわかり, 細胞分化, 細胞内マトリックス産生など多様な生理活性作用が明らかにされている. 我々はこれまでヒト歯肉由来線維芽細胞におけるPDGFの効果について検討を行い, 細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を介してアラキドン酸遊離を起すことを報告している. 本研究では歯肉線維芽細胞におけるプロスタグランジンE2(PGE2)産生に対するPDGFの役割について検討を行った. 【材料および方法】1. 歯肉由来線維芽細胞は, 臨床的に健康な歯周組織を有する患者から得られた歯肉を採取し, 10%FCS含有α-MEM培地を用いて5%CO2, 37℃の条件下で培養したものを使用した. 2. PGE2量は, 細胞に各種刺激を与え培養液中に遊離されたPGE2量を酵素抗体法を用いて測定した. 3. シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)mRNA発現は, 細胞よりRNAを抽出し, RT-PCR法により検出した. 【結果, 考察】1. 歯肉由来線維芽細胞にPDGFを単独で作用させた場合, アラキドン酸遊離は認められたがPGE2遊離はほとんど認められなかった. IL-1βを6時間作用した細胞においては, PDGFの30分間刺激により, IL-1β単独時と比較してPGE2遊離は明らかに増加した. このPDGFによるPGE2遊離増加は, チロシンキナーゼ阻害剤や培養液中のカルシウムイオンを除くことによって抑制された. 2. アラキドン酸単独刺激ではPGE2遊離はわずかであったが, IL-1βで6時間作用した細胞においては, PDGFと同様に, アラキドン酸によりPGE2遊離は増強された. 3. PDGFおよびアラキドン酸によるCOX-2mRNA発現はほとんど認められなかったが, IL-1βを6時間作用させた細胞にPDGFおよびアラキドン酸の30分間刺激を行うと, IL-1βによるCOX-2mRNA発現は増強された. 以上の結果より, IL-1βによりprimingを受けた歯肉由来線維芽細胞においては, PDGFにより遊離されたアラキドン酸はCOX-2mRNA発現増強を介しPGE2産生を亢進することが示唆された. 【結論】IL-1βにより刺激を受けた歯肉由来線維芽細胞において, PDGFはアラキドン酸を介したPGE2産生に関与することが明らかとなった.
ISSN:0385-0110