培養ケラチノサイトにおけるラミニン5,インテグリンα6β4の発現
【目的】歯周組織において, 付着上皮は歯肉の結合組織とは外側基底板を介して, また, エナメル表面とは内側基底板を介して付着しており, その接着性によって歯周組織の恒常性の維持と防御機構に重要な役割を果たしていると考えられている. このような付着上皮細胞の接着機構に関して, 付着上皮の細胞表面にインテグリンα6β4などの接着タンパクが発現すると共に, 内, 外側基底板にはラミニン5をはじめとする種々の細胞外マトリックスが発現することが知られている. そこで, 本研究では, 付着上皮のエナメル表面あるいは露出歯根面への接着機構を解明する目的で, 培養環境下において, ラット歯肉上皮およびヒトケラ...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本歯周病学会会誌 2003, Vol.45 (suppl-1), p.120-120 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 【目的】歯周組織において, 付着上皮は歯肉の結合組織とは外側基底板を介して, また, エナメル表面とは内側基底板を介して付着しており, その接着性によって歯周組織の恒常性の維持と防御機構に重要な役割を果たしていると考えられている. このような付着上皮細胞の接着機構に関して, 付着上皮の細胞表面にインテグリンα6β4などの接着タンパクが発現すると共に, 内, 外側基底板にはラミニン5をはじめとする種々の細胞外マトリックスが発現することが知られている. そこで, 本研究では, 付着上皮のエナメル表面あるいは露出歯根面への接着機構を解明する目的で, 培養環境下において, ラット歯肉上皮およびヒトケラチノサイト細胞株を用い, 付着上皮の細胞接着に関与すると考えられている, 接着タンパクのインテグリンα6β4と, そのリガンドである細胞外マトリックスのラミニン5およびそのサブユニットα3, β3, γ2の発現を, 細胞生物学的及び免疫組織細胞化学的に検討した. 【材料および方法】実験動物は, 体重150g, SD系ラットを用い, 腹腔内麻酔下に付着上皮を含む歯肉細胞を採取し, 凍結切片を作製後, 免疫蛍光染色を行い, 蛍光顕微鏡にて形態学的に観察した. 一次抗体としては, ラミニン5, ラミニンのサブユニットα3, β3, γ2, インテグリンα6, β4を用いた. 免疫電顕のためには, 0. 2%グルタールアルデヒド加4%パラフォルムアルデヒドにて潅流固定後, LR-White Resinに包埋し, 4℃にて紫外線重合, 超薄切片を作成後, 10nmコロイド金を用いた免疫電顕染色を行い, 透過型電子顕微鏡にて観察撮影した. また, 培養細胞およびラット口腔粘膜上皮細胞よりtotal protainを抽出し, SDS-PAGEにて電気泳動後, Western blotting法にて検討した. 歯肉上皮細胞の培養のためには, 生後3週令の体重50gのSD系ラットを用い, 腹腔内麻酔下にて付着上皮を含む歯肉上皮を採取, 25U/mlディスパーゼにて37℃で2.5時間インキュベート後に, 上皮と結合組織を分離し, K-SFMを用いて口腔粘膜上皮細胞の初代培養を行った. さらに, ヒトケラチノサイト由来細胞株であるHaCaT(Bukamp et al. , 1988)は, 通常10%FBS含有のD-MEMにて培養した. これらの培養細胞は, 4%パラフォルムアルデヒドおよび100%メタノールで固定後, 免疫細胞化学染色を行った. 【結果】ラット歯肉付着上皮では, ラミニン5と, ラミニンッリおよびインテグリンα6β4が内, 外側基底板, 特に内側基底板に強陽性像が観察された. HaCaT細胞およびラット口腔粘膜上皮細胞では, インテグリンα6β4と, 細胞外マトリックスのラミニン5, ラミニンα3, β3, γ2, は, 培養細胞伸展部の基底付着面に対応して局在し, 明瞭な陽性蛍光像として観察された. また, ラット口腔粘膜上皮の初代培養では, 培養5~7日でコロニーの形成が観察された. HaCaTの免疫電顕観察では, 細胞外基質および一部はゴルジ器官にラミニン5, ラミニンγ2の局在を示す金粒子が特異的に観察された. Western blottingでは, HaCaTおよびラット口腔粘膜上皮細胞において, ラミニンα3, β3, γ2, インテグリンα6, β4のそれぞれで, バンドが検出された. 【考察および結論】ラット歯肉付着上皮において, 付着上皮とエナメル表面および結合組織との接着機構については, インテグリンα6β4の上皮細胞表面の発現し, ラミニン5およびそのサブユニットのγ2が内側基底板に強く発現を示すことともに, ラット口腔粘膜上皮細胞やヒトケラチノサイトの培養環境下においても, 細胞接着には, 上皮細胞でラミニン5が産生され, ゴルジ経由で細胞外へ放出されると共に, 細胞表面にはインテグリンα6β4が発現し, 細胞-細胞外マトリックス間接着を構成することが示唆された. これらのことから, 付着上皮細胞のエナメル表面への接着には, ラミニン5の内側基底板への発現が重要であることが示唆された. |
---|---|
ISSN: | 0385-0110 |