A-36.歯石除去後のポケット上皮下結合組織の病理組織学的研究

鶴見大学歯学部付属病院に来院した慢性辺縁性歯周炎患者のうち, 歯石除去後, 歯肉剥離掻爬術を必要とした19名(36~60歳)の摘出歯肉を用いて, 除石後の組織変化を調ぺた. ポケット底部上皮直下の疎性結合組織における修復過程で, 線維形成の初期に出現する酸性ムコ多糖, ついで好銀線維, 弾性線維, 膠原線維などを光顕で観察し, 次に電顕的にそれらの微細変化を検索した. 歯石除去を行なわなかった部位では, 炎症による組織や細胞の崩壊産物などが多くみられたが, 線維形成に関与するルテニウムレッド陽性物質も認められ, 組織の崩壊と新生が共存していることが認められた. 除石後, 炎症が消退傾向にある部...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 1987, Vol.29 (1), p.267-267
Hauptverfasser: 吉野雅己, 新井高, 中村治郎, 小島広正, 近野三江子, 菅原信一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:鶴見大学歯学部付属病院に来院した慢性辺縁性歯周炎患者のうち, 歯石除去後, 歯肉剥離掻爬術を必要とした19名(36~60歳)の摘出歯肉を用いて, 除石後の組織変化を調ぺた. ポケット底部上皮直下の疎性結合組織における修復過程で, 線維形成の初期に出現する酸性ムコ多糖, ついで好銀線維, 弾性線維, 膠原線維などを光顕で観察し, 次に電顕的にそれらの微細変化を検索した. 歯石除去を行なわなかった部位では, 炎症による組織や細胞の崩壊産物などが多くみられたが, 線維形成に関与するルテニウムレッド陽性物質も認められ, 組織の崩壊と新生が共存していることが認められた. 除石後, 炎症が消退傾向にある部位では, 線維形成に関与すると思われる網状フィラメント, 微細線維, 膠原線維などの表面にルテニウムレッド陽性物質が存在している像が比較的多くみられたが, 崩壊産物が多くみられる部分や線維束が密になっている部分なども認められた. また, 臨床的に正常とみなされた部分でも, 多少にかかわらず炎症状態が残っていて, 密な線維束が集っている部分もみられたが, 炎症の影響を大きく受けて線維間に崩壊した細胞質の小胞と思われるものが認められる部分もあった. 一本の歯においても歯肉部位によって炎症症状が大きく変化するので, ポケットの深さや歯肉の病態, 臨床的経過などで組織像を分類することはできなかった. しかし臨床的に発赤, 浮腫が消退した歯肉には, 差違はあるが線維形成が行われていることが推察された. 今後は線維形成にかかわる種々の因子との関係を検索することが必要と思われるので, 臨床的に経時的な変化を示す症例を得ることは, はなはだ難しいが, 症例を増して, 検索していく予定である.
ISSN:0385-0110