A-33.歯肉剥離掻爬手術後の付着様式におよぼす歯根表面粗さの影響について(第1報)

慢性辺縁性歯周炎にみられる深い歯周ポケットを改善するために広くflap operationが行なわれている. しかし多くの研究が示すようにその治癒形態は長い上皮性付着によるものがほとんどであり, 近年より多くの線維性付着を得ることが有利であるとの考えから, 歯根面に対するクエン酸処理や, ファイブロネクチンの応用などが研究されている. 一般に, flap operationに際しては, 根面の壊死セメント質を除去し, 滑沢にrootplaningすることが, plaque controlの面からも, 再付着を期待する面からも有利とされているが, 根面の滑沢性と線維性付着との関連性を実験的に観察...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 1986, Vol.28 (3), p.923-924
Hauptverfasser: 本郷興人, 藤保芳博, 西岡敏明, 林亨, 菅野寿一, 石川純
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:慢性辺縁性歯周炎にみられる深い歯周ポケットを改善するために広くflap operationが行なわれている. しかし多くの研究が示すようにその治癒形態は長い上皮性付着によるものがほとんどであり, 近年より多くの線維性付着を得ることが有利であるとの考えから, 歯根面に対するクエン酸処理や, ファイブロネクチンの応用などが研究されている. 一般に, flap operationに際しては, 根面の壊死セメント質を除去し, 滑沢にrootplaningすることが, plaque controlの面からも, 再付着を期待する面からも有利とされているが, 根面の滑沢性と線維性付着との関連性を実験的に観察した研究は少ない. 本研究は歯根の表面粗さが, flap operetion後の治癒形態, 特にセメント質の新生を伴う線維性再付着に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った. 実験にはサル4頭の上下顎臼歯頬側根頬側面を用い, plaque controlを徹底して健康な歯周組織を確立した上でflap opera-tionを行った. 手術は, 歯肉弁を剥離して歯槽骨を露出し, その骨縁から縦3mm, 横2mmの骨を削除して歯根を露出した. すべての歯根面を滑沢にroot planingした上で, 滑沢群はそのままの根面とし, 粗造群ではさらに市販のカミソリの刃を重ね合わせた試作チップを超音波発生装置Enacに取りつけて根面を処理し, 洗浄後縫合した. 観察期間は1, 2, 4, 8週とし, ト殺後通法に従って組織標本を作製して2週と8週の検体について, 上皮のdown growth, 新生セメント質形成の2項目を骨削除量を100%とした割合で評価した. その結果, 上皮のdown growth率は2週の検体で滑沢群20%, 粗造群-1.4%と, 滑沢群で有意に大きな値を示し, 8週の検体でも滑沢群で大きな値を示したが, 有意差は認められなかった. また新生セメント質形成率は2週の検体では明らかなセメント質形成はなく, 両群に有意な差は認められず, 8週の検体では滑沢群35.2%, 粗造群44.6%と, 粗造群で有意に大きな値を示した. 〔質問〕(広大歯)二階宏昌位置をマークするためのノッチによって, 接合上皮の深行が影響され, R面, S面の正確な比較に不都合をきたす可能性はないでしょうか. 〔回答〕(北大歯)本郷興人サル等の大型動物においてflap operationを行なう場合, 術前の上皮の最根尖側の位置にばらつきが多く, 確実に線維性付着のあった部位として骨削除前の骨レベルにノッチを付与しております. しかしそのノッチが術後の治癒に及ぽす影響については今回は検索しておらず, 今後の課題としたいと考えます. 〔質問〕(東医歯大歯)石川烈実験的に歯肉を剥離する際, 骨膜を含んだ全層剥離で行なわれているのでしょうか. 実際の臨床例においては露出根面を被うのは部分層剥離であり, 根面に作用する細胞成分はちがってくる可能性があり, それが上皮の深行増殖やセメント質形成に影響するのではないか. 〔回答〕(北大歯)本郷興人今回はすべてfullthickness flapにて処置しており, partial thickness flapで行った場合の治癒形態に関しては, 今後の課題としたいと考えます. 〔質問〕(東北大歯)堀内博超音波スケーラ-から放出される水の中にはかなり多量の微生物が存在しております. 実験側と対照側間で超音波スケーラーから出る水の影響はいかがでしょうか. 〔回答〕(北大歯)本郷興人今回は, 滑沢群, 粗造群を一歯根おきに設定しているため, 両群ともEnacからの水流にさらされております. したがってEnacからの水による影響はほとんどないものと考えております.
ISSN:0385-0110