A-31.RatにおけるE. coli 由来LPSの歯肉塗布による影響

LPSの歯肉塗布が歯周組織に及ぽす病理組織学的影響を検討した成績は乏しいように思われたので, 以下検討を試みた. 3週齢のWister系rat5匹をtetracycline添加飲料水と普通食にて飼育した. LPS塗布は毛筆により, 下顎切歯歯肉溝部に塗布した. 塗布には一日のうち一定時間内に2mg/ml~3mg/mlLPS0.05ml程度を塗布した. 1匹のratは, 1時間塗布直後に屠殺し, 残り3匹は塗布時間を2時間とし, 数日間繰り返した. 塗布終了後1匹を1日後, 1匹を3日後, 残り1匹を7日後に屠殺した. 下顎切歯部を摘出し, 通法により固定, 脱灰, パラフィン包埋した後, 薄切...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 1984, Vol.26 (3), p.609-610
Hauptverfasser: 浅井康裕, 守山隆章, 中静正
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:LPSの歯肉塗布が歯周組織に及ぽす病理組織学的影響を検討した成績は乏しいように思われたので, 以下検討を試みた. 3週齢のWister系rat5匹をtetracycline添加飲料水と普通食にて飼育した. LPS塗布は毛筆により, 下顎切歯歯肉溝部に塗布した. 塗布には一日のうち一定時間内に2mg/ml~3mg/mlLPS0.05ml程度を塗布した. 1匹のratは, 1時間塗布直後に屠殺し, 残り3匹は塗布時間を2時間とし, 数日間繰り返した. 塗布終了後1匹を1日後, 1匹を3日後, 残り1匹を7日後に屠殺した. 下顎切歯部を摘出し, 通法により固定, 脱灰, パラフィン包埋した後, 薄切してH-E染色を行い鏡検した. 塗布直後から主にPMNが接合上皮直下に浸潤し, 塗布を長期間続けると円形細胞も増加した広範囲の炎症性細胞浸潤となった. 接合上皮の根尖方向への増殖や歯槽骨辺縁部の軽度の破骨細胞を伴う骨吸収像も認められ, 軽度の歯周炎に類似した像を呈していた. LPS塗布修了後3~7日放置すると炎症は漸次消退したが, 一部うっ血性の血管拡張や上皮組織の欠損が増大傾向にあった為, 細菌感染を容易にする状態にあったと考えられた. この中で好中球の役割は大きく, 病巣部に集積した変性PMNが多数存在していた事から, 自己融解してlysosomalenzymeを放出し, その作用により上皮組織の欠損を来たしたものと推察された. また, LPSの直接的あるいはmediatorを介する破骨細胞の活性化により骨吸収を導いたものと思われた. 従って, 本実験条件でLPSは健康上皮に歯周炎を惹起させ得ると推察された. 以上の結果は口腔内で実際に起こると考えられる状態とは, LPSの作用時問, 量がかなりかけ離れた実験系と思われるので, 今後, 実験系の工夫を予定している. 〔質問〕(化研病理)秋吉正豊 内毒素はポケット内で生ずるのか, ポケット壁に侵入した菌が破壊された後に組織内に作用するのか. 歯槽骨の吸収は唇側歯肉に起こるのか. 〔質問〕(新大歯)原耕二 私どもの教室山岸の結果からみて, ごく初期病変の実験を追加していただくと, 長期観察との関連性がよくわかるものと考えられるので, 今後お願いしたい. 〔解答〕(愛院大歯)浅井康裕秋吉先生の質問に対して. 骨吸収がどの部位から生じるか, 本実験では明確にできないが, 結果より, 歯膜側から生じ, 後に, 粘膜側で生じたように思われた. . endotoxinは, 上皮を通過すると考えている. 原先生の質問に必して. plaqueの存在下で実験を行なったため, plaque中の抗原物質も同時に上皮を通過すると考えられるが, 初期の変化における, plaqueの影響を除いた考慮はしなかった. 以後, 検討が必要と思われる.
ISSN:0385-0110