A-3.実験的歯肉炎ラットにおける唾液分泌量,唾液中IgA量およびPeroxidase活性について

唾液は口腔内環境の一因子として, ロ腔内の各種の炎症や感染症の発症および経過に重要な役割を果していることは周知の事実である. 大阪歯科大学薬理学教室では, 市販の粉末飼料と水とだけで飼育しても下顎前歯歯頸部に歯垢が著しく形成され, かつ同部位の歯肉に炎症が生ずるいわゆる実験的歯肉炎のアニマルモデル(ODUPlaque-susceptible rat, 以下Susと略す)を開発したが, 今回私たちはSusおよびSusと同じ飼料と水とで飼育しても下顎前歯歯頸部に歯垢形成がみられないSusと同腹のラット(Plaque-resistantrat, 以下Resと略す)の1)全唾液量, 2)耳下腺, 顎下...

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Veröffentlicht in:日本歯周病学会会誌 1984, Vol.26 (3), p.591-592
Hauptverfasser: 篠原光子, 大浦清, 森政和, 高井規安, 内橋賢二, 吉田洋, 覚道幸男
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:唾液は口腔内環境の一因子として, ロ腔内の各種の炎症や感染症の発症および経過に重要な役割を果していることは周知の事実である. 大阪歯科大学薬理学教室では, 市販の粉末飼料と水とだけで飼育しても下顎前歯歯頸部に歯垢が著しく形成され, かつ同部位の歯肉に炎症が生ずるいわゆる実験的歯肉炎のアニマルモデル(ODUPlaque-susceptible rat, 以下Susと略す)を開発したが, 今回私たちはSusおよびSusと同じ飼料と水とで飼育しても下顎前歯歯頸部に歯垢形成がみられないSusと同腹のラット(Plaque-resistantrat, 以下Resと略す)の1)全唾液量, 2)耳下腺, 顎下腺および舌下腺の唾液分泌量ならびに3)全唾液中のIgA量およびPeroxidase活性と, 歯肉炎の炎症程度との関連性について比較検討した. 歯肉炎の程度は下顎前歯部の歯周Pocketの深さによって判定し, 全唾液はNaviaの方法により, また各腺の唾液はTakai et al. の方法により採取し, 唾液中のIgA量およびPeroxidase活性はそれぞれLight-scatter-ing法およびPyrogallol法によって測定した. Susの顎下腺の唾液分泌量はResの顎下腺の唾液分泌量よりも少なかった(ただし, 耳下腺および舌下腺の唾液分泌量にはRes, Susとの間では有意差は認められなかった. またSusにおいては全唾液量と歯肉炎の程度の間には負の相関関係が認められた. しかし, 唾液中のIgA量およびPeroxidase活性と歯肉炎の程度との間には相関性はみられなかった. )以上の実験の結果から, 唾液中のIgAやPeroxidaseよりも唾液分泌すなわちその洗浄作用のほうが口腔内における炎症および感染に対する防御因子として役割が大きいと考えられる. 〔質問〕(広大歯)二階宏昌 1. ODU-plaque susceptibleratにおける臼歯部の歯垢沈着及び歯肉の炎症の状況について. 2, 他の非特異的抗菌物質(Iysozyme, lactoferin等)についても同様に検討する必要はないか. 〔解答〕(大歯大)篠原光子 1. 臼歯(特に上顎)の歯垢沈着度, 炎症の程度はどうであったか. 今回対象とした下顎前歯部ほど著明には見られなかった. 2感染防御因子としてPeroxidase, IgA以外のもの例えばリゾチームなどはどうか. 感染防御因子としてまずPeroxidase, IgAを手掛けたので, 今後その他のものについて検討してゆきたい. 〔質問〕(岐歯大)岩山幸雄 Peroxidase活性がsusceptibleとresistantで有意の差があったが炎症は関係がなかったということだがPeroxidase活性の役割について何か討論があったら教えて頂きたい. 〔解答〕(大歯大)篠原光子 SusとResとの間でPeroxidaseに差はあったがSusの中での炎症程度により相関性は認められなかった. このことをどのように考えるか. この実験結果は炎症程度が少なくともPeroxidaseのみによって, しかも直接的に影響を受けるわけではないことを示唆していると考えられる.
ISSN:0385-0110