2-G-07-1.顎下腺に生じた腺癌の1例

WHO分類では腺腔形成を示すなど, 腫瘍細胞に腺性分化が明らかでありながら, いずれのカテゴリーにも該当しない唾液腺癌を腺癌, NOS(not otherwise specified)としている. 今回われわれは顎下腺に生じた腺癌の1例を経験したので報告した. 患者は32歳, 女性で5年前より左側顎下部の腫脹に気付いていた. 唾石症の疑いで某病院耳鼻咽喉科にて精査を受けたが特に異常はないとされていた. その後無痛性のため放置していたが, 最近になり増大傾向を示したため某歯科医院受診後, 紹介により2001年9月20日当科初診となった. 初診時, 左側顎下部に25×20mm大, 弾性硬の腫瘤を認...

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Veröffentlicht in:日本口腔科学会雑誌 2003, Vol.52 (6), p.455-455
Hauptverfasser: 鈴木円, 宮田勝, 岡部孝一, 高木純一郎, 名倉功, 車谷宏, 草間薫, 坂下英明
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:WHO分類では腺腔形成を示すなど, 腫瘍細胞に腺性分化が明らかでありながら, いずれのカテゴリーにも該当しない唾液腺癌を腺癌, NOS(not otherwise specified)としている. 今回われわれは顎下腺に生じた腺癌の1例を経験したので報告した. 患者は32歳, 女性で5年前より左側顎下部の腫脹に気付いていた. 唾石症の疑いで某病院耳鼻咽喉科にて精査を受けたが特に異常はないとされていた. その後無痛性のため放置していたが, 最近になり増大傾向を示したため某歯科医院受診後, 紹介により2001年9月20日当科初診となった. 初診時, 左側顎下部に25×20mm大, 弾性硬の腫瘤を認めた. 表面皮膚に異常は認めず, 圧痛も訴えなかった. 顎下腺腫瘍の臨床診断の下, 穿刺吸引細胞診施行しWarthin腫瘍の診断を得たため, 10月29日全身麻酔下に腫瘍切除術を施行した. 切除物の病理組織学的検索で腫瘍は病理組織学的に充実性または一部管状および筋状の胞巣を形成して増殖する腺癌で分裂像は目立たず, 細胞異型は中等度であった. 一部腫瘍内に小石灰化巣を認めた. 間質には著明な形質細胞, リンパ球の浸潤を見た. 被膜を有しているが, 一部不明瞭あるいは被膜外浸潤が認められた. SCに対する免疫染色では管腔様を呈する部の腫瘍細胞および管腔内容物に陽性所見を認めた. IgAに対しては弱いながらも同様の部と間質の一部に陽性反応を認めた. 以上のことからsIgAの分泌機構を保持している低悪性型の腺癌, NOSの診断を得たため, 11月19日腫瘍直上の皮膚を付して左側肩甲舌骨筋上頸部郭清術を施行した. 郭清組織中のリンパ節および顎下腺付近の組織や皮膚には腫瘍細胞を認めなかった. 現在, 術後約1年半を経過したが, 再発や転移の徴候はなく経過良好である.
ISSN:0029-0297