2.開口障害を主訴として受診した破傷風の1例

破傷風は, 予防接種の効果と公衆衛生の改善により発症頻度は激減しているが, 一旦発症すると現在でも致死率の高い疾患である. 今回, 破傷風の1例を経験したので, その概要を報告した. 患者は66歳の男性で, 既往歴, 家族歴に特記事項はなかった. 職業は大工で, 平成12年11月初旬で鋸で左拇指を受傷. 11月9日, 開口障害を自覚し以後, 開口障害の増悪, 発音障害, 嚥下障害が出現したため, 11月21日に当科を紹介受診した. 初診時, 高度の開口障害(開口度5mm), 軽度の頸部硬直, 痙笑, 嚥下障害を認め, 破傷風の疑いで対診した本学医学部附属病院神経内科に即日入院となった. 破傷風...

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Veröffentlicht in:日本口腔科学会雑誌 2003, Vol.52 (2), p.83-84
Hauptverfasser: 深澤早由良, 石川誠, 野谷健一, 福田博
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:破傷風は, 予防接種の効果と公衆衛生の改善により発症頻度は激減しているが, 一旦発症すると現在でも致死率の高い疾患である. 今回, 破傷風の1例を経験したので, その概要を報告した. 患者は66歳の男性で, 既往歴, 家族歴に特記事項はなかった. 職業は大工で, 平成12年11月初旬で鋸で左拇指を受傷. 11月9日, 開口障害を自覚し以後, 開口障害の増悪, 発音障害, 嚥下障害が出現したため, 11月21日に当科を紹介受診した. 初診時, 高度の開口障害(開口度5mm), 軽度の頸部硬直, 痙笑, 嚥下障害を認め, 破傷風の疑いで対診した本学医学部附属病院神経内科に即日入院となった. 破傷風II期の診断にて, 暗室個室での安静, IVHでの栄養管理, 抗破傷風ヒト免疫グロブリン, ペニシリンGの点滴を行ったところ, 11月27日頃から諸症状の改善を認め, 12月11日, 開口度は27mmまで改善, 他症状もほぼ消失したため, 破傷風トキソイド筋注後, 退院となった. 翌年1月18日当科受診時, 開口障害を含めた症状は完全に消失していた. 質問 北海道大歯2口外 三古谷忠 鑑別できない開日障害を診た場合, 破傷風との診断には, 続発する特徴的所見を見極めなければならないと考えます. 入院下で, 慎重な観察をする以外ないと考えてよろしいでしょうか. 回答 北海道大歯1口外 深沢早由良 破傷風において, 開口障害を初発症状として受診するPtは50-70%との報告があります. 本症例では, 初診時に開口障害をはじめ, くいしばり, 嚥下発音障害, 痙笑, 頸部硬直等の頭頸部領域の筋強直の臨床症状を認め, 顎関節症炎症由来の開口障害を呈する疾患とは異なっており, 破傷風の徴候を認めました. 追加 日本歯大新潟歯2口外 又賀泉 当科においても極めて類似した経過後, 不幸な転帰をとられた例を経験していますが, 発症から死亡されるまでの期間が1週間と短く劇症でした. 質問 日本歯大新潟歯2口外 又賀泉 1. 発症から破傷風と診断されるまでの期間は何日だったでしょうか. 2, 破傷風菌は地域性があると報告されていますが, 貴症例の地域の感染発症率について教えてください. 回答 北海道大歯4口外 深澤早由良 1. 今回の症例では, 開口障害を認めるまでの期間(1期)は早く1週間, 全身痙攣を認めるまでの期間(2期)は本症例では不明確ではありますが, 開口障害の持続期間を目安にする18日ぐらいだったと思われます. 受傷から発症までの期間は1週間以上, またonset timeが48hr以上であったことより, 本症例は予後良好な軽症であったと思われます. 2. 天塩地区(羽幌町)のPtでしたが, 同地での発症例が過去に報告されています. 破傷風の地域性は現在著明でなく, 滋賀県以外の全県で発症を認めています. (2001報告)現在の発症地として東京, 鹿児島が報告されています.
ISSN:0029-0297